不動産投資家実践ストーリー Vol.31 専業大家 順心専業大家
今回の不動産投資家実践ストーリーは、不動産投資を始めてわずか5年でアパート2棟、区分マンション4室所有し家賃収入3,000万円まで規模を拡大。現在は専業大家として活動している「順心専業大家」さんです。
順心専業大家さんは、1997年に中国引揚者3世として来日。大学卒業後、大手生命保険会社に総合職として就職します。不動産投資を始めたいきさつ、賃貸経営を成功に導くコツなどをたっぷり伺いました。
1.きっかけは、理想の仕事と現実とのミスマッチ
編集部:今日はよろしくおねがいします。順心専業大家さんは、もともと生命保険会社にお勤めでしたね。
順心専業大家さん:私は中国出身で、海外の仕事をしたくて就職活動をしていました。大学では経済を専攻し、大学院では金融について学びました。銀行や証券会社からも内定をいただきましたが、給料の良さから大手生命保険会社に入りました。
実際入ってみると、かなりドメスティックな社風の会社で、社員の考え方も古かった。当時はサービス残業が多く、朝8時に出勤して夜10時に帰るという日々。休日出勤もありました。「給料のためにここで働くのもどうなのか」と疑問に思いました。もっと豊かな生活……金銭的なものもそうですが、時間や精神的なゆとりもほしい。余裕のある生活をどうすれば送れるだろうか、とずっと思っていたんです。
もちろん転職も考えました。「転職するなら外資系が一番自分に合うかも」とも思いました。ただ、外資系企業勤務の知人の話を聞くと時間の拘束がかなり多いみたいで。サービス残業や休日出勤が多く、家族との時間があまり取れなさそうだったので「だったら違う道があるのではないか」と思い始めました。
編集部:不動産投資を始める前、他の投資も試していらっしゃったんですよね。
順心専業大家さん:株式投資をしていました。でも、トータルでマイナス400~500万円とかなり損しました。
「株は自分に合わない。株以外で確実に稼げる投資方法はないのか」と考えたとき、生命保険の仕組みを思い浮かべました。生命保険は、毎月お客様から生命保険料が振り込まれる美味しいビジネス。「同じような仕組みの投資はないだろうか」と考えた矢先、妻の友人から「不動産投資はどうでしょう。毎月お金が振り込まれるのは、生命保険と似た仕組みですよね」と言われて。それでようやく不動産投資に目覚め、まず区分マンションから始めてみました。
2,2つのリスク対策で不安を解消
編集部:不動産投資を始めるにあたり不安だったことは?
順心専業大家さん:まずは「空室」ですね。それ以外のことはだいたいリスクヘッジできると思うんです。自然災害による物件への被害は、保険でカバーできるでしょう。
空室も、物件の立地さえ間違わなければ問題ありません。基本的に私は、人口の多い1都3県のターミナル駅付近の物件しか買わないと決めています。空室リスクを回避するためです。不動産は株のように買ってすぐ売ることはできませんし、長く持てば持つほど利益が出る投資。長期的な視点を持つことが大切です。
編集部:なるほど。空室以外にはありますか?
順心専業大家さん:「修繕」ですね。修繕とひと口に言っても、木造の物件なら安く、RCなら高い、というようにまちまち。まあ、家賃収入を浪費するようなタイプの大家さんでなければ大丈夫だと思います。修繕費は常に発生するものではありませんし、一度修繕すれば15~20年は持ちます。
それ以外のリスクは無いと思います。他の投資だとそれなりにボラティリティはありますが、不動産はあまりそれを感じません。資金計画さえしっかりしていれば、1部屋、2部屋くらい空室が出たとしても大した影響はないでしょう。
3.投資ニーズと合致する物件情報をどう集めるか
編集部:不動産に対する不安を解消するためにさまざまな本を読まれたそうですね。今も読んでいますか?
順心専業大家さん:最近読んだのは、失敗しない物件の買い方や、脱公務員の大家さんが書いた失敗しようがない新築投資に関するもの。どちらかというと失敗談が多いですね。成功する本を読むより「同じ失敗をしない」という教訓を得るほうがおすすめ。正しい知識を身に付け、人の失敗談を参考に同じ過ちを繰り返さないことが大切です。
編集部:他の投資家から話を聞くことはありますか?
順心専業大家さん:2018年に脱サラして千葉に移った際、自分と同じような考え方の大家さんとのつながりを持ちたいと思いました。ネット検索で「千葉大家の会」というコミュニティの存在を知り入会。以前は、知り合いや信頼できる業者から話を聞いていました。最初の区分マンションを購入した際は「Yahoo!不動産」で探しましたが、それ以降は知人の紹介だったり、さまざまな業者を訪問する中で提案を受けたものだったり、ですね。今まで購入したもののほとんどが業者からの提案です。
編集部:それからどんどん物件を増やしていって。
順心専業大家さん:2014年に購入した最初の物件は錦糸町駅から徒歩3分の区分マンションで、ワンルームで広さ約13㎡。約600万で買いました。9ヶ月ほど運用し、約950万円で売却。売却益プラス9ヶ月間の家賃収入で利益確定です。その後、押上に区分マンションを買い、また売却。売却益プラス家賃収入で300万円ほどの利益になりました。次に、浅草の区分マンションを750万円で購入。ここは事故物件でしたが、フルリノベーション後で新築同然のコンディションでした。事故物件であることを理由に指値を入れ、800万円の販売価格から750万円に値下げしてもらったんです。約980万円で売却し、家賃収入を加えて300万円ほどの利益を得ました。その後、自由が丘に約1,050万円で物件を買い、一年ほど所有して1,400万円で売りました。
編集部:区分マンションで利益を出し続けていったのですね。
順心専業大家さん:区分マンションの購入・売却を繰り返すことで「どういう物件を仕入れてどう売却するのがいいか」というノウハウが蓄積されていきました。そんな中、ある日突然業者から「一棟ものの物件を運用してみては?」とご提案いただいたんです。
区分マンションの投資をやってみてわかったのが、「相場観」が一番大事だということ。相場さえ押さえていれば、どういう物件を仕入れるのがいいか大体見えてくる。一棟まるごと購入する前に、とりあえず本を一冊読んで知識を得、「この地域だったらどれくらいの利回りが妥当かな」という相場を丁寧にチェックして、それから購入に至りました。
編集部:業者も順心専業大家さんのニーズがわかっているから、そのように利益を生みやすい物件を持ってくる、ということなのでしょうか?
順心専業大家さん:というよりは、提案の中から「これは自分に合っている」「これは合わない」とフィルターをかけている感じですね。
編集部:その中には、ポータルサイトに掲載されていなかったものもありますか?
順心専業大家さん:ありますね。現在所有している物件の中で、錦糸町のタワーマンション、市川のRC一棟、北千住の区分マンションは、提案の時点でまだレインズに登録されていなかったものです。
錦糸町のタワーマンションは、利回りそのものは低いんです。ただ、今の相場で売ると1,800万円ほどの売却益が出る見込みです。運用期間中はローンの残金が減りますし家賃収入も入ってくる。かなり美味しいですよね。そういう「富を生む不動産」に投資する、というのが私のポリシー。ですから、不動産購入時には必ずしも利回りだけをチェックしているわけではありません。資産性の物件……例えば銀座の物件を購入すると、利回り2桁はあり得ない。そこで「いかに相場よりも安く購入して高く売るか」を常に考えるんです。売却益、ローン返済、そして運用期間中の家賃収入。この3つがプラスになればかなり大きな利益が期待できます。この3つは常に意識していますね。
編集部:なるほど。そのようないわゆる「川上物件」を紹介してもらえるようになったのには、何かきっかけがあったのでしょうか?
順心専業大家さん:最初は区分マンションしか所有しておらず、一棟ものを買いたいと思っても、入ってくる情報は区分だけ。仕方なく自分の区分マンションを管理してくれている会社に相談しに行ったら「弊社でも一棟ものを扱っているので、よろしければいかがでしょうか」と言われて。それ以来、一棟ものの物件に関する情報も得られるようになりました。
編集部:お持ちの物件の中でも特に市川市のものは、市川駅から徒歩10分で利回り11.5%とかなり良い物件ですね。10%を超える物件はなかなかないと思うのですが……。
順心専業大家さん:今土地だけで売れば、何千万円もの売却益が出ますね。利回り11.5%とお伝えしていますが、2部屋民泊用に貸し出しているので、その分の利益を含めるとさらにプラスですね。
民泊は「ただ賃貸として運用していても旨味はないかな」と思って始めました。実際、賃貸の倍以上の利益が出ていますね。民泊以外にも時間貸しをはじめさまざまな方法があるので、その物件に合う運用スタイルを考えるのがいいと思います。
編集部:そのような富を生む物件を紹介してもらうには、日頃からの業者とのコミュニケーションが大切ですね。
順心専業大家さん:そうですね。あと「自分はこのエリアの物件を購入したい」という明確な希望をきちんと伝えたほうがいい。一棟ものの物件といっても色々あるじゃないですか。どこの物件を買いたいか、希望をできるだけ具体的に伝えることが重要です。
加えて、私が重視しているのは土地の価格。基本的に、不動産は土地と建物から成り立っています。そのうち土地の価格が7割以上を占めるものでないと、投資にはなかなか厳しいのではないかと思っています。
4.不動産投資を成功に導く3つのポイント
ポイント1:相場観を養う
編集部:不動産投資成功に必要なものは、やはり相場観ですか?
順心専業大家さん:相場観が命です。株の場合、その銘柄を買うのが正解か不正解かは、売却してみないとわからない。利益が出るかもしれないし、損してしまうかもしれない。その点不動産は、購入の時点で大体わかるんです。例えば、ある清涼飲料水を20円で買ったとします。市場の相場が100円くらいだとして、半値の50円で売ったとしても利益が出ます。不動産はそれと同じ。相場よりも安く買えば、その時点でもう利益が出ているんです。不動産投資の醍醐味ですね。
ポイント2:情報と人脈
編集部:なるほど、やはり相場観が命だと。
順心専業大家さん:ただ、相場が分かっていたとしても、不動産の情報が得られないと元も子もない。情報と、情報をもたらしてくれる人脈の存在も欠かせませんね。
ポイント3:銀行の開拓
編集部:他に重要だと思うポイントはありますか?
順心専業大家さん:銀行融資の開拓ですね。恥ずかしながら、サラリーマン時代は業者任せでした。現在は、自ら地元の地銀や信用金庫に出向き関係づくりをしています。具体的には、預金をしたり、積立預金や投資信託を始めたり。そういう小さなことからコツコツと信頼関係を構築しています。ちょうど今ある地銀と新築物件の話をしているのですが、かなり協力的に対応してくれていると感じます。
編集部:そういう関係性の積み重ねが大切なのですね。
順心専業大家さん:信頼関係を築くには、お金をケチらないこと。たまに「クレジットカードをつくりませんか」というお話をいただくことがあります。カードをつくると年会費がかかりますよね。内心「もうカードは要らない」と思っていても、相手とWin-Winの関係を築くには相手に気持ちよくなってもらわなければなりません。例えば、私が未公開物件を急にその銀行に持ち込み、「融資をどうにかしてほしい」と頼んだとします。すると、担当者からすると、日ごろから色々とお世話になっているので、「今度は私の出番です」と対応してもらえる可能性が高いです。一方的にこちらから「何とかしてくれ」と頼んでも、応じてもらえるわけがない。将来的なことを考えてその人と仲良くなりたいなら、自分が支払える額であればケチってはいけないと思っています。「何かしてくれ」ではなく「こちらに何ができるか」を常に考えることが大切です。……続きを読む