会社員をしながら総資産1億8千万円を作った新築アパート投資法【後編】〈丸川隆行さん〉

<不動産投資実践ストーリー#14> 丸川隆行さん

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5,失敗しない投資エリアの見つけ方

編集部:丸川さんはどういった基準でエリアを決めましたか?

丸川さん:わたしの場合は、大きく3つの基準があって、いずれかひとつ以上に該当するエリアを選びました。

ひとつは、土地勘があるエリアということです。毎日通勤していてどんな人が住んでいるのかわかり、駅周辺にはどんなものがあるのかわかれば、まったく土地勘がない場所より精度が高く賃貸需要を予測できます。

2つ目は、人口増加が見込まれる場所です。国立社会保障・人口問題研究所の調査で、市ごとの人口動向が発表されていますので、こういったデータを参考にして人口増加が見込めるエリアを選びました。

3つ目は、人気がある駅の『周辺の駅』です。賃貸物件を探すときに、多くの人はまず住みたい沿線の人気がある駅を検索します。そして、その駅からの距離や広さ、賃料を検討して条件をすり合わせていきます。そして、予算が合わない場合は、周辺の駅までエリアを広げて探します。人気の駅は当然土地価格が高いものですが、その周辺の駅になると土地価格が大きく変わることがあるのです。一方賃料は数千円の違いですからそれだけ利回りを上げることができます。

わたしが住んでいるのは神奈川県の相模原市ですが、相模原市は、土地の値段が高い割に経年による家賃の値下がりが大きいので、土地勘があって神奈川県では人口が集中している横浜市と川崎市にアパートを建てました。

横浜市の物件は、横浜駅から電車で15分ほどの駅で、中でも土地価格が割安でした。
川崎市の物件は人口増が見込まれており、かつターミナル駅から2駅の所で見つけました。

選び方のポイントとしては、不動産ポータルサイトなどで、とにかく数多く土地を見ることです。わたしの場合は、『at home』で検索しました。土地情報は中古マンションの倍以上の件数があるので、それだけチャンスが多いと思います。

6,利回りを最大化する建築設計

編集部:なるほど。次にその土地に何世帯の建物が立つかを調査するのですね?

丸川さん:はい。ここでのポイントは、建ぺい率と容積率を確認することです。同じ駅からの距離で同じ面積の土地があった場合、たとえば土地Aは価格4,500万円で建ぺい率60%、容積率200%。土地Bは3,000万円で建ぺい率50%、容積率100%だったとします。価格だけ見ると、土地Aは土地Bの1.5倍ですが、建築可能な容積は土地Aのほうが2倍もあります。この建ぺい率と容積率から考えて何部屋くらいの建物が建つかを計算します。
具体的な計算のやり方は、わたしの本にも書いてありますので詳しく知りたい方は読んでください。

編集部:ありがとうございます。そして3つ目は建築士・建築会社を探すということですがこれはどういう方法で探しますか?

丸川さん:はい。次は建築会社に実際にその土地の法的な制約を考慮してどのくらいの延べ床面積の建物が立つのかを計算してもらう、「ボリュームチェック」という作業です。

不動産業者から販売図面や測量図などボリュームチェックに必要な書類を取り寄せて、建築会社に依頼します。
土地を販売している不動産業者が建築も行っていればその旨を伝えてやってもらうこともできます。
注意点は、設計価格を含めた総建築費がいくらなのか、総建築費には何が含まれているのか、設計料は建築費に含まれているのかを確認しておくことです。
と言うのも、あとから、「水道管工事が入っていなかった」「プロパンガス工事は含まれていなかった」など、認識違いでトラブルになることがあるからです。

編集部:なるほど。いい建築会社の選び方のポイントはありますか?

丸川さん:そうですね。ポイントはいろいろありますが、一番いいのは、すでに新築アパートを建てた経験がある大家さんからいい会社を紹介してもらうことだと思います。どんな仕様のものをいくらくらいで建築できるかを事前に聞くことができますし、実際に建てた物件を見学させてもらえれば、その会社のテイストや標準仕様がわかります。

標準仕様は会社によって異なります。わたしの物件は、1棟目はカーテンレールがついていましたが、2棟目はカーテンレールがついていませんでした。また、地盤改良や外構工事を含んでいるかも会社によってさまざまです。ですから工事代金に何が含まれているのか細部まで確認が必要です。

編集部:ありがとうございます。どんな設備を取り付けるのかも重要そうですがいかがですか?

丸川さん:そうですね。実際にどんな人向けの物件にするのかを想定した上で、ターゲットとなる人達がどういう設備を求めているのかを調査して、導入することが安定稼働させるポイントです。

その物件に住んでもらいたい方のイメージを固めたら、『SUUMO』などの大手ポータルサイトの検索項目を参考に、想定する人たちが実際にどんな設備を欲しがっているかを調べます。そして、人気設備ランキングを参考にアパートに導入する設備を絞り込みます。『SUUMO賃貸経営サポート』などで、設備状況と部屋探しをしている人がチェックしている検索項目を確認します。そして求められているけどあまり設置されていない設備を導入すれば競争力が上がります。

また、間取りの決め方も重要ですので、建築候補地近隣の賃貸仲介会社にヒアリングしながら最適な間取りを選択します。

7,失敗しない資金計画

編集部:なるほど。4つ目は融資の申し込みですね。最近は、不動産投資に対して融資が引き締められていますが、融資申し込みのポイントはどういうところですか?


丸川さん:そうですね。今年に入ってからどの金融機関も投資物件への融資を引き締めています。以前はフルローンやオーバーローンを利用できましたが、いまは、頭金を1割~2割用意する必要があります。それだけ自己資金が必要になりますが、他に以前と変わりはないと思います。

金融機関の探し方として最も効率がいいのは、土地の仲介をしてもらう不動産業者に相談することです。アパートの融資に慣れた担当者であれば、物件の内容と属性を踏まえて適切な金融機関を紹介してくれる可能性が高いです。

申込時の注意点としては、建築準備金として数百万円を加算しておくことです。理由は、建築が始まってから、地盤の改良が必要なことがわかったり、想定外のことが発生し、追加費用がかかる場合があるからです。
あとから追加融資を申し込むと、審査をやり直さなければいけなくなりますので、予め加算しておきます。

8,契約は法人が有利

編集部:ありがとうございます。想定外の事態にも備えておく必要がありますね。5つ目は契約締結ですね。ここでもポイントはなんですか?

丸川さん:はい。5つ目は契約を締結するわけですが、売買契約は個人より法人でするほうがメリットが多いと思います。

ひとつは将来的に不動産を売却する際に、税金が有利になります。個人所有の場合、不動産を売却して利益が出ると、その不動産を所有していた期間によって20%か40%の税金がかかりますが、法人で所有している場合、利益を他の経費で相殺することができるのです。

それから、建物の建築代金には消費税がかかりますが、法人の場合一定の条件を満たすと消費税の還付を受けられる場合があります。

また、更に不動産を買い増しして拡大していきたい場合には、法人としての実績を積むことができますので、個人属性の限界を超えることができます。

編集部:ありがとうございます。そして建物を建築という流れでしょうか?

丸川さん:はい。6つ目は建築ということですが、ここでの注意点は繰り返しになりますが、建物の仕様と請負契約内容の再確認です。

外構工事、水道加入金、ガス、水道引き込み工事、エアコン、照明、カーテンレール、地鎮祭などが建築費に含まれないケースが多いので確認しておきます。
また、請負契約の内容を詳細に確認しておきます。建築中に天災で建物に被害があった場合の取り決めや、引渡日については完成後の客付けに影響しますので特に注意が必要です。

それから、設備の機種選定やサッシやクロスの色などを決定しますが、入居者目線で選ぶことが重要です。

完成後は、床や壁の汚れ、ドアなどの可動確認、可動部分の干渉、電気関係の可動状況など引き渡しを受けるにあたり不備がないか確認します。

編集部:ありがとうございます。そして入居者募集を行うのですね?

丸川さん:はい。新築アパートは繁忙期に完成するように建築するのがセオリーです。入居者募集は告知期間が長いほうが広く情報を行き渡らせることができますので、建築が始まったらすぐに実施するのが理想的です。また、仲介会社向けに見学会を実施して物件を知ってもらうことも客付けに有効です。

9,不動産投資をはじめる方が押さえておくべきポイント

編集部:ありがとうございます。少し話が変わりますが、2019年は不動産投資物件への融資引き締めなど不動産投資を取り巻く状況が大きく変化しているのではないかと思います。それを踏まえて丸川さんが、ゼロベースでいまから不動産投資に参入するとしたら、どのような方法を採るかをおうかがいしたいと思います。
たとえば、年収700万円・自己資金500万円くらいあるとしたらどうされますか?


丸川さん:そうですね。基本的には新築という考え方ですが、いまはフルローンを引きにくくなっています。頭金が2割必要と仮定すると、土地代含め2,500万円ですから、首都圏では難しいかもしれません。

ということになると中古アパートや戸建てになるかと思います。わたしは実際に築30年の中古アパートを持っていますが、築古購入で難しいのは設備故障や修繕の対応です。そういった物件はキッチンの水漏れやエアコンが動かなくなる、玄関のカギが閉まらなくなるなどのトラブルは起きやすいのでその対応が必要です。突発的に発生しますので、サラリーマンをやられている方は対応ができる仕組みを作っておく必要があります。
また、古さがある部屋をどこまでリフォームするかの判断が必要になります。お金をかければ見栄えの良い部屋になりますが、それでは本来の目的の収入が増えません。適切なリフォーム内容を妥当な金額で行われているか判断しなければなりません。
素人が事前にそういったことを見極めるのは、いい土地を見つけるより難しいと思います。

わたしの場合はサラリーマンを続けながら賃貸経営を行っていますので、管理会社とどこまでコミュニケーションが取れるか、運営後どれくらいの自分の労力を投入できるかという観点で物件種別を考えるべきだと思います。

編集部:ありがとうございます。これから不動産投資をはじめる方へアドバイスをいただけますでしょうか?

丸川さん:はい。不動産投資には、金利上昇、空室、修繕、災害、出口などさまざまなリスクがあります。そういったことをしっかり学んで対策法を考えておくことが重要です。

ご自身が置かれている状況や資産背景によって、どのリスクを許容できるか、どこまで労力を投入できるかによって投資法を判断すべきだと思います。

たとえば、地方に2,000万円のアパート投資を考えた場合、その周辺に住んでいて、DIYできる時間があったり、管理会社と密にコミュニケーションが取れる方ならいいと思います。しかし、遠方に住んでいたり、管理に時間が取りにくい方には適切でないように思います。
一般的に物件面での投資法に着目しがちですが、自分ができることとできないことについて考えておく必要があると思います。

融資が出ない環境だから、安易に安い戸建てや築古のアパートと考えるのではなく、購入後に賃貸運営をできるかを考えてほしいと思います。購入するのが目的ではなく、運営をして収入を得ることが目的だと思いますので。


あとは、焦らないことです。慌ててしまうとおかしな物件を掴むことがよくあります。慌てて買わなくても物件は次から次に出てきますから落ち着いて判断してもらいたいと思います

編集部:ありがとうございました。丸川さんのお話を聞いて感じたことは、手堅く不動産賃貸経営をされているということです。参入前に2年以上かけて200冊以上の不動産投資本を読み、セミナーに参加するなどしっかりと勉強をし、様々な手法を比較し、最終的に土地から新築アパートを建てることを選択し、成功を手にしました。やはり事前準備が重要ということではないかと思います。
 丸川さんの著書『サラリーマンの僕がやっている 稼げる「新築アパート」実践投資法』にはこれから不動産投資に参入を考えている方にとって、参考になる新築アパート経営のノウハウが詳しく書かれています。あなたもぜひ学んでみてはいかがでしょうか。

インタビュー実施 2019年5月

丸川隆行

IT起業に勤めるサラリーマン。IT企業やコンサル会社での勤務経験から、労働集約型の働き方に危機感を持ち、様々な投資を始める。26歳で株式投資をはじめるもライブドアショックで3分の1に。次に始めたFXでは資産を2倍にしたがリーマンショックで退場。自己努力で資産を増やせる投資を探した結果、不動産投資にたどり着く。平均的な給料、資産背景がない中、自身で考えた投資法の実践により2014年に利回り10%超えの新築アパートを建築。2017年には利回り9%弱のアパートを建築。築古アパートについても半分空室のアパートを購入し満室にした実績を持つ。現在は自身の経験を活かし、サラリーマンの新築アパートによる不動産投資のサポートを行っている。

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