不動産投資は比較的手間のかからない投資ではありますが、物件選定には手間をかけるべきです。というのも、不動産投資の中で物件選定は最重要テーマであり、物件選定次第で不動産投資の成功は左右されるからです。
そこで今回は、物件選定のポイントを4点解説するので、それを踏まえた上で物件選びをしましょう。
●不動産投資の成否は買う前に8割決まっている
ポイントを解説する前に、なぜ物件選定が重要か?という点を解説します。不動産投資で収益をあげるためには物件取得後の物件運営も重要ですが、それにも増して物件選定が重要になります。
というのも、不動産投資の基本は家賃収入であり、それは物件の魅力度が大きく左右するからです。特に、「立地」は絶対に変えられないポイントなので、立地的に魅力のない物件は物件取得後に改善できるポイントは少ないです。
そのため、以下より解説するポイントを押さえて、収益性の高い物件選定することが重要になります。
●投資の目的を明確にする
1つ目のポイントは、投資の目的を明確にすることです。一般的に、不動産投資をするときは以下4つの目的に分類できます。
・安定収入
・売却益
・節税
・相続税対策
○安定収入
まずは安定収入を得ることです。不動産投資の基本的な収入は、上述したように「家賃収入」です。その家賃収入は賃借人がいる限り継続的にもらうことができる上に、ほかの投資商品に比べて家賃が変動することは少ないです。
つまり、比較的安定した収入を得られる点が不動産投資の大きなメリットであり、それを目的に置く人は多いです。
○売却益
前項のように基本的に家賃収入がメインではありますが、不動産を売却することで得る利益も収入になります。ただし、売買時の諸費用が高額であり、税金も高税率になるので、その点を加味した上で売却しなければいけません。
○節税
不動産は、以下の理由で節税効果が高い投資です。
・経費計上できる項目が多い
・減価償却費が高額になりやすい
・不動産所得は総合課税
医師や弁護士は高収入なので、節税効果が高い不動産投資のメリットは大きいです。また、公務員や上場企業社員の方は節税しにくいので、不動産投資によって本業の所得にかかる税金も節税できます。
◎経費計上できる項目が多い
不動産投資は以下のように経費計上できる項目が多いです。
・不動産取得時の諸費用
・ローン利息部分
・固定資産税や都市計画税
・管理会社への委託費用
・部屋や共用部の補修費用
・減価償却費用
もちろん、経費がかかるということは支出がかかるということではありますが、経費計上することで所得を減らすことができます。
◎減価償却費が高額になりやすい
経費の中でも減価償却費用が計上できる点が最も節税につながるポイントでしょう。減価償却費用とは、物件の取得費用を毎年「経費」として計上できる費用です。つまり、「実際に毎年支払っているお金」ではない費用を経費計上できるということです。
そうなると、不動産投資によって手元にお金は残っているけど、減価償却費用によって「不動産所得は赤字」という状態になることもあります。赤字にならなくても、減価償却費用によって大きく所得を減らすことができるので、節税につながりやすいです。
◎不動産所得は総合課税
前項の減価償却費用の影響で、不動産所得がマイナス50万円になったとします。仮に、この不動産投資をしている方が上場企業社員で、給与所得700万円だったとします。
その場合、不動産所得は総合課税になるので、「給与所得700万円-50万円=650万円」まで所得が下がるので、本来支払う所得税が減額されるという計算です。さらに、所得税額によって税額が決まる住民税や、社会保険料も減額されるのです。
このように、減価償却費用によって不動産投資は節税効果の高い投資になります。
○相続税対策
前項は所得税の節税でしたが、不動産投資は相続税対策にもなります。相続税は「(財産の評価額-基礎控除)×税率-控除額」で算出されます。つまり、財産の評価額を減額できれば、相続税は節税できるということです。
その「財産の評価額」が不動産の場合は現金で持っているよりも7割ほどまで下がるため、結果的に相続税も下がるというわけです。しかし、不動産の資産価値が7割に落ちるわけではないので、資産価値は保ちながら税金だけ安くできます。
現金資産が潤沢にある場合、相続したときの税金が高額になるので、相続税の節税のために不動産投資をする人は多いです。
●物件タイプを決める
2つ目のポイントは物件タイプを決めることです。不動産投資で取得する物件には、以下のタイプがあります。
・区分マンション
・一棟マンション
・アパート
なお、厳密には上記の中でも新築・中古があるので、合計6種類の物件タイプがあります。ただ、以下で紹介するそれぞれの特徴については、新築も中古も大きな違いはありません。
○区分マンション
区分マンションとは、一室のマンションを購入し賃借人を付ける投資です。区分マンションは物件価格も安価なので始めやすい投資であり、マンションは鉄筋コンクリート造なので資産価値も落ちにくいです。
それらの点からも、区分マンション投資は比較的初心者向けといえますが、区分になるので収益性は高いとはいえません。また、空室時には収益ゼロになるので、いかに空室を出さないかが収益を上げる鍵になるでしょう。
○一棟マンション
一棟マンションは、区分ではなく一棟を所有することです。新築の場合は土地を取得し、そこに新築マンションを建築します。中古の場合は一棟マンションを購入します。
区分と違い、複数の部屋を所有しているので、上手く運営できれば大きな収益になるでしょう。また、1部屋が空室になってもほかの部屋からの収益でカバーできるので、空室リスクは分散されます。
ただし、区分マンションとは桁違いの取得費用がかかるので、ある程度資産がないと厳しいです。
○アパート
アパートも、一棟マンションと同じように一棟のアパートを取得します。ただ、マンションよりは家賃が下がるため、一棟マンションよりは収益性が落ちます。一方、取得費用も落ちますので、一棟マンションよりは始めやすいです。
また、アパート投資の場合は複数戸所有しているので、区分マンションよりは収益が高くなるケースが多いです。
そのため、アパート投資は区分マンションの空室リスクや収益性の低さが嫌だ…とはいえ一棟マンションを取得するほど資金はない…という方に向いており、比較的メジャーな不動産投資といえるでしょう。
●投資タイプを決める
3つ目のポイントは、投資タイプを決めることです。投資タイプは色々とありますが、大きく分けて以下2つに分かれるでしょう。
・都心の物件を堅実に運営していく
・地方の物件をリフォームなどを駆使して運営していく
○都心の物件を堅実に運営していく
都心の物件は、比較的「高価格・低利回り」ですが、空室リスクが低くコツコツと収益を積み上げていく投資です。不動産投資らしく手間もかからない投資なので、特に多忙な医師や弁護士の方には向いているといえます。
○地方の物件をリフォームなどを駆使して運営していく
一方、地方の物件は比較的「低価格・高利回り」ですが、空室リスクが高かったり、劣化が激しかったりします。
たとえば、「利回り20%」の物件は非常に高利回りですが、共用部や部屋のリフォーム費用がかかり、それを含めると利回り13%まで落ちる…ということは多いです。とはいえ、上手くリフォームできれば高利回りも狙えます。
ただし、現地確認やリフォーム業者の選定…その後の修繕依頼など少々手間がかかるので、「土日は確実に時間を確保できる」などの方でないと難しいでしょう。
●結局「キャッシュフローが出るか?」「売却可能か?」
4つ目のポイントは、キャッシュフローが出るか?売却可能か?をきちんと見極めることです。結局、不動産投資の本質は収益を上げることであり、仮に「節税対策」が目的だとしても大赤字物件を保有すれば節税した意味がなくなってしまいます。
○キャッシュフローが出るか?
キャッシュフロー(CF)とは、簡単に言うと「現金の流れを可視化して手元に残るお金を算出する」ことであり,たとえば以下のような表を作成することでキャッシュフローは分かります。
上記は10年スパンですが、20年スパン程度でCF表は作成した方が良いです。というのも、長期スパンで作成しないと、将来的な修繕金額などを盛り込めないからです。
上述したように不動産投資は家賃収入がメインなので、まずはキャッシュフローが長期スパンで見て黒字になることが重要です。
○売却可能か?
メインは家賃収入ではありますが、将来的に不動産を売却することもあるでしょう。そのときに資産価値が著しく下がっていると、売却益で赤字になってしまいます。そうなると、せっかく家賃収入が継続的に黒字でも、その売却益でトータル赤字になることもなります。
そのため、物件を取得するときは「売却可能かどうか?」も念頭において物件選定しなければいけません。売却可能か?というのは「需要があるか?」という点が重要なので、そもそも家賃収入が上がるか?という視点と共通するポイントです。
ただ、一棟物件の場合は土地の価値も高いです。そのため、土地の道路づけによる「どのくらいの規模の建物が建築できるか?」という点も重視して物件選定をしましょう。
●まとめ
このように、「投資の目的を明確にする」「物件タイプを決める」「投資タイプを決める」「キャッシュフローが出るか?売却可能か?を考える」という4点を念頭に置き物件選定をしましょう。
物件選定に時間をかけてでも収益性の高い物件を取得できれば、その後の手間はさらにかからなくなります。