<不動産投資家実践ストーリー#10〉サーファー薬剤師 宮崎俊樹さん
【この記事のPOINT】今回の不動産投資家実践ストーリーは、中古戸建投資のエキスパート「サーファー薬剤師」こと宮崎俊樹さんです。宮崎さんは千葉県を拠点に中古戸建て再生を中心とした賃貸経営を行っています。特徴は少ない借り入れで高利回りを実現していることです。2012年からこれまで取得した物件の平均価格は450万円。いまでは戸建て11戸を所有し、資産総額5,000万円、キャッシュフローは720万円を実現しています。
不動産投資関連書籍『空き家は使える!戸建て賃貸テッパン投資法』の著者であり、中古戸建て賃貸経営を中心としたノウハウをブログなどで精力的に発信しています。
今回は、『不動産投資Navi』会員の方々のために、高利回り中古戸建て投資のノウハウを惜しみ無く語ってもらいました。
1,なぜ初心者に中古戸建て投資がいいのか?
編集部:宮崎さん、今日はよろしくお願いいたします。早速ですが、宮崎さんが不動産投資をはじめたきっかけを教えていただけますか?
宮崎さん:はい。僕は薬科大学で薬剤師の資格をとって薬剤師として働き始めたのですが、将来に目標を見いだせずモヤモヤしていました。そのときにあるセミナーに参加しました。その時となりに座っていた人が、不動産投資家でした。その方と親しくなり不動産投資の話を聞いているうちに影響を受け、自分も不動産投資に参入することにしました。
しかし、当時はほとんど貯金がありませんでしたので、家賃6万円の戸建てから3万円のアパートへ引越しをして節約をしながら軍資金を作りました。
編集部:ありがとうございます。不動産投資家から影響を受けたのですね。不動産投資はいろいろな手法がある中、地方の中古戸建を中心に投資を行っている理由はどういったことですか?
宮崎さん:まず、少ないキャッシュではじめられるということです。それに僕が不動産投資をはじめた当時は中古戸建投資をやっている人が少なかったのです。
エリアについては首都圏よりも地方の方が不動産投資家の数が少ないのでそれだけ競合が少ないです。また、地方戸建ては金額が安いので首都圏の大資本の会社はあまり参入してきません。
それと、資産価値を高めることよりも高利回りにフォーカスしました。同じスペックの戸建てが、千葉県の沿岸部の小さな町で家賃6万円に物件だとすると、政令指定都市では7〜8万円の家賃になります。ところが物件価格は沿岸部の小さい町で400万円だとすると、政令指定都市では700万円位になると思います。そういう意味で、地方の戸建ては有利です。
また、戸建ては集合住宅と違って需要に供給が追いついていないため、客付けしやすいということです。
編集部:なるほど。少ない資金で競合が少なく伸びしろがある市場へ参入したのですね。地方中古戸建てのいいところはどういったところですか?
宮崎さん:はい。繰り返しになりますが、まず安いということですね。僕が投資しているエリアでは、築20年前後の物件を300〜400万円程度で購入することができます。
現金でも手が届く金額ですから、多額の借金を抱える重圧を感じることがありません。
それから、分散投資しやすいことです。一棟物の場合、万一災害や火災で物件に被害が出たら最悪家賃収入がなくなります。戸建てなら、場所を分散させて複数持つことができますので、被害を最小限に抑えることができます。
あとは、初心者が経験を積むのに最適ということです。多くの大家さんが「最初に買った物件は、今の自分だったら購入しない」と言っています。
そういうふうに、「あとからよく考えてみると、実際はそれほど良い物件ではなかった」ということがよくあります。
最初に多額の投資をして失敗すると取り返しがつかないことになる恐れがあります。しかし300万円〜400万円の金額であれば、やり直しができます。
また、こういった物件で経験を積んでいくことで、様々なコネクションを作っていくことができますので、割安物件の情報が入手できたり、リフォームを安く上げることができるようになってきます。
投資実績が増えると金融機関の評価も上がりますので、融資が受けやすくなるということもあります。
それと、戸建は隣室の騒音など問題がないので、集合住宅よりも管理に手間がかからないことが多いです。
戸建ての入居者の多くはファミリー層ですから単身世帯に比べると入居期間が長いというのもメリットですね。ファミリー世帯の平均入居期間は6年。一方単身世帯の平均入居期間は4年と言われています。入居期間が長いとそれだけリフォームなどの入退去コストをおさえることができます。
あとはなんと言っても売却しやすいことです。
不動産投資は、物件を売却することで一連の流れが終了します。一棟物の場合、買い手は基本的に不動産投資家だけですが、戸建の場合入居者がいれば不動産投資家に売れますし、いなければ、マイホームとして一般の人に対して売ることもできます。それだけ流動性が高いので有利です。
2,いま、一から最短で月60万円を目指すなら
編集部:昨今、投資物件への融資が引きにくくなるなど不動産投資を取り巻く環境が変化しています。そこでお伺いしたいのですが、もし、いま宮崎さんが会社員で、年収700万円くらいで、自己資金がおよそ500万円あるとします。
そして、いまの宮崎さんの家賃収入と同じくらいの、月間キャッシュフロー約60万円を不動産投資で目指そうとした場合、一からはじめるとしたらどういう方法で実践されるかをお聞かせいただけますか?
宮崎さん:そうですね。僕がこれからやるとしても今までと同じように地方の戸建てを買います。
理由は繰り返しになりますが、少額の自己資金でやれる、賃貸の需要がある、分散投資できる、経験を積むのに最適、管理が楽、コストが低い、売却しやすいということです。
入門編としてはやりやすいと思います。
いつまでにキャッシュフロー60万円を達成したいかにもよりますが、もし短期的にだとすると、戸建てだけでは時間がかかります。なので、はじめに戸建てを2戸くらい買って、それを共担にして融資を引いて一棟物を買うというのがいいかもしれません。それぞれいいところがあって、補完しあえます。
編集部:なるほど。具体的にはどういった点を補完できますか?
宮崎さん:戸建てにないキャッシュフローの大きさと、一棟物にない流動性の高さですね。
一棟物はレバレッジがかけられるのでキャッシュフローが出やすいのがメリットです。
逆に買い増しするたび借り入れが増えて、物件に抵当権が設定されれば売却しにくいというのがデメリットです。
一方中古戸建のメリットは利回りが高いこと、平均入居期間が長いこと、それと価格が低いので売却しやすく、流動性が高いことです。デメリットとしては、キャッシュフローが少ないことです。
それと、自己資金は500万円あっても手元において融資を引いてはじめると思います。理由はふたつあって、ひとつは予期せぬ出来事に備えるためです。自己や病気、何かの事情で収入が途絶えてしまうようなこともないとは限りませんのである程度の資金は置いておく必要があります。
それと、早く規模拡大するためです。キャッシュフロー月60万円を実現するには物件を買い増ししていかなければいけません。もし次にいい物件が出たときに手元に現金がないとすぐに購入することができません。ある程度の現金を置いておくことで融資を活用した規模拡大が促進できるからです。
3,サラリーマンが融資を引く方法
編集部:なるほど。融資を活用するわけですね。今はサラリーマンが融資を引きにくくなったと言われていますが、どうすると融資を引きやすいでしょうか。
宮崎さん:最初はひとりで銀行を開拓するよりも、買いたい物件を扱っている不動産業者を通じて銀行へ打診してもらうのが確実だと思います。一見さんは門前払いされる場合が多いです。
編集部:融資が受けやすい業者の選び方はありますか?
宮崎さん:今はサラリーマンが賃貸用として中古戸建物件を買う場合、日本政策金融公庫であれば融資を引ける可能性が高いと思います。ですから、日本政策金融公庫との関係性が強い業者を選んだほうがいいと思います。そういう観点で言うと、収益物件専門業者がいいと思います。
というのも、僕の場合物件を買うパターンはおもにふたつあって、ひとつは街の不動産屋さんから、もう一つは収益物件専門業者からです。
収益物件専門業者の場合、日本政策金融公庫ともつながりがある場合が多いのですが、街の不動産業者の場合、地銀・信金としか付き合いがないことが多いです。ですから、収益物件専門業者のほうがいいと思います。
それと、地銀・信金の融資は、物件の場所と買い主の住んでいる場所が別の自治体だと借りられないこともあります。たとえば、買い主は東京に住んでいて、物件は千葉などの場合ですね。
さらに、戸建の場合は、空室よりも入居者がいる物件のオーナーチェンジのほうが融資を引きやすいです。
戸建の場合は、入居者が1か0かですから、金融機関から見ると、空室の場合不動産投資初心者には客付けが難しいのではないかと判断されてしまうことがあります。
その点、オーナーチェンジなら入居者がいて、買えば家賃収入があることがわかっているので貸しやすいということです。
編集部:戸建てのオーナーチェンジ物件は数的には少ないような印象ですがいかがでしょうか?
宮崎さん:空き家に比べれば少ないですね。僕はこれまで戸建てを18戸買いましたが、オーナーチェンジは2戸だけです。また、オーナーチェンジの場合は、売り主が不動産投資家なので価格交渉が難しいです。しかし諦めずに探せば必ずありますので、粘り強く探すことがだいじです。
4,割安物件を手に入れるには?
編集部:ありがとうございます。利回りを上げるにはいかに物件を安く買うかということが重要だと思いますが、宮崎さんの場合どういった工夫をしていますか?
宮崎さん:僕の場合はお付き合いがある街の不動産屋から、空き物件を買うことが多いです。戸建ての空き物件は、相続したけどだれも住まないから売りたいという投資家ではない売り主の場合が多いのです。
そういう方は、物件に対する関心が低いですし、遠方に住んでいるので価格設定は業者に丸投げのことが多い。だから価格交渉がしやすいです。そういった物件を元付業者から購入します。
編集部:元付業者から物件情報をもらうにはどうしたらいいでしょうか?
宮崎さん:不動産業者さんにふらっと行って、利回りがいい物件を紹介してもらえる可能性は低いです。ですから、すでに不動産業者と付き合いがある人から紹介してもらうというのが確実ですね。大家の会へ行って先輩投資家と関係を作り、紹介してもらうなどです。……続きを読む
宮崎俊樹さんの著書『空き家は使える!戸建賃貸テッパン投資法』