〈不動産投資家実践ストーリー#11 越谷大家さん〉
6,越谷大家流利回りアップのアイディア
編集部:ありがとうございます。それでは、物件購入後の利回りアップ法についてお聞きしたいと思います。越谷大家さんは具体的にどういった利回りアップ法を実践されていますか?
越谷大家さん:僕は適正な範囲で家賃を上げています。入退去のタイミングで、物件のリフォームやリノベーションを実施してバリューアップし、共益費を加算するとか、太陽光発電を設置するとか、駐車場なし物件の場合は、近隣駐車場を一括で借りて入居者へ提供するとかですね。
あとは、保険代理店もやっています。これは借家人賠償保険の代理店です。利回りアップというよりは、きちんと借家人賠償保険に入ってもらうという趣旨です。入居時は加入しているか確認しても、賃貸借契約更新時に保険の更新を忘れていたというケースがけっこうあります。万一何のときに、大家が入っている保険だけで対応できなくなる可能性がありますので、きちんと加入しておいてもらうことがリスク回避にもなります。
それから、物件によって、敷地に自動販売機の設置もしています。これは売上げの20%から、業者によっては25%程度が手数料として入ってきますので、利回りアップに貢献します。一番簡単な利回りアップ法だと思います。やり方は簡単で、自販機業者に連絡し、見積もりを依頼するだけです。
あとプロパンガスです。これはお小づかい程度収益ですが、プロパンガスの物件はプロパンガス業者さんと契約して、その業者へ切替えをすることもありますね。プロパンガス業者は激戦で、各社サービスを競い合っています。ですから、切り替えると給湯器を無料で交換してくれたり、エアコンやコンロ、洗面台まで無料交換してくれる場合があります。切り替えの際に1世帯あたり10万円から15万円まで経費をかけられる会社もあります。
もう一つは少し難易度が上がりますが、所有物件の屋根に携帯アンテナを設置するという方法です。携帯キャリアのビル局というマンションなどの屋上を借りて設置するタイプのものがあり、これを建てるために自分の物件の屋根を貸して権利収入を得ることができます。僕の物件にも設置していますが、アンテナ設置料として月6万円ほど入ってきます。これは、各キャリアの電波改善部署に連絡して、「電波状況が悪いようなら屋根をお貸しします」と伝えれば電波チェックをしてもらえます。
僕が一番好きなのは太陽光発電を設置する方法です。よく見かけるのは屋根の上に太陽光パネルを載せる方法ですが、他にも空いている土地に設置する方法や屋根の上に乗せる方法も出てきました。なぜこれがいいかと言うと、物件の屋根が有効活用できることと、不動産の空室リスクを太陽光の売電で補うことができるからです。
これは屋根があればどんな建物でも設置を検討できます。注意点としては、10kw以上のものが載るのか10kw以下しか載らないのかということです。どちらかによって収益の額が大きく違うからです。
それと、家具をレンタルする方法もあります。これは単身者向け物件に限定されますが、はじめての一人暮らしの方には便利だと思います。はじめから家具付きという打ち出し方でなく、「家具・家電レンタル可」と記載して、一点につき500円から1,000円程度でレンタルするというのもいいです。
また、区分マンションを持っている場合は、そのマンションの管理組合の役員になることで報酬を得ることもできます。これは、労働収益ですが、マンション管理の知識とスキルをアップに繋がりますのでそういった意味ではチャレンジしてみるのもいいと思います。
7,物件トラブルをすばやく解決する方法
編集部:ありがとうございます。利回りアップの方法は意外とたくさんあるものなのですね。アイディア次第で大きく収益増が狙えそうです。
話が変わりますが、客付けでなにか工夫されていることはありますでしょうか?
越谷大家さん:そうですね。ひとつは物件管理を物件のトラブルにスピーディーに対応してくれる管理会社に依頼するということです。というのも、僕の経験上、管理会社によって物件のトラブル対応へのスピード感が違うからです。
一概には言えないのかもしれませんが、僕が以前依頼していた大規模な管理会社だと定休日が2日続いたりすることがあって、その間連絡もつかなければ、トラブル対応もしてもらえないことがあるのです。
以前物件でトラブルがあったとき、火曜日の20時頃に連絡したのですが、電話が通じず、水曜は定休日で、木曜は担当者が休み。やっと連絡がついたのが金曜日で、その間入居者さんに不便な思いをさせてしまったことがありました。
その点、今依頼している管理会社は、小規模で小回りが利きますので社長や敏腕担当者とすぐに連絡が取れることもあり、速やかに対応してもらえる場合が多いです。入居者さんへのサービス提供の観点からこういった管理会社と密にお付き合いをして、入居者さんへ迷惑をかけないように心がけています。
編集部:ありがとうございます。トラブル対応の質で入居期間が変化することもあるとおもいます。だから管理会社の選び方も重要ということですね。
話が変わりますが、越谷大家さんが不動産投資家としてこれからどういったところを目指しているか、目標があったら教えていただけますか。
8,目標は無借金経営
越谷大家さん:はい。いまは返済比率を下げたいですね。いまの返済比率はおよそ40%ですが、これを段階的に下げて行って最終的には借金を0にしたいです。そのために物件の売却や入れ替えも検討しています。
僕は楽しいことが好きなので、楽しみながらやっていきたいです。夢といえば、沖縄の石垣島に物件を一棟買いたいですね。旅行も好きで色んな所へ行きます。
先日も静岡県の物件の空室メンテナンスのついでに家族を連れて旅行をしました。宿泊はその部屋です(笑)ホテル代わりにも使えますから色んな場所に物件を持つのもいいです。
9,不動産投資で一番大事なこと
編集部:ありがとうございます。最後にこれから不動産投資をはじめる方へ、アドバイスがありましたらお願いできますか?
越谷大家さん:はい。まず、賃貸経営は実際にひとが住む場所を提供するという大きな責任があります。ですから、快適な環境を提供するという気持ちを持ってやったほうがいいと思います。「不動産投資」というとどうしても資金を出して、物件の選定やファイナンス・管理はすべて業者任せでやってしまうひとがいますが、そういうことだとなかなかうまくいかないと思います。ですから、「不動産賃貸業」というビジネスをするという意識を持ってやることが大事ですね。
一方であまり物件に対して愛着を持ちすぎるのもよくないと思います。愛着がわきすぎると、やらなくてもいい過剰なリフォームやバリューアップをしてしまうこともあります。ですから、入居者の役に立ってリターンも増えることに投資をするべきだと思います。
それと、ひとりで大家をやっていると孤独で辛いことも多くありますので、仲間を作るといいと思います。
ネットで検索すると、「大家の会」がたくさんありますので、自分にあうところに参加して情報交換をしてみるといいと思います。できれば物件を買う前に行って、アドバイスをもらうということもいいと思います。
それから、ご家族がいる方はご家族との時間を大切にされるといいと思います。たとえばDIY好きな大家さんの中には、物件を買うと、自分でリフォームをする人が多く、それに時間を掛けすぎてしまうこともあるようです。
ご家族ごとに事情が違うので、一概に言えませんが、もしその間家族が置き去りになってしまっているようであればそれはあまり良いことではないと思います。
手段が目的になってはいけないと思います。そんなことを心がけながら頑張ってもらいたいと思います。
ありがとうございました。
越谷大家さんのお話しから感じたことは、アイディアが豊富で、卓越した行動力がある方だということです。同じ話を聞いても、それを聞き流してしまうひとと、話から自分の目標達成に向けた行動のアイディアを得て具体的なアクションに落とし込むひとの2つに大別されます。越谷大家さんは、もちろん後者で、圧倒的なスピードと行動力を持っている。だから短期間で規模を拡大し、セミリタイアを実現できたのだと思います。
これから不動産投資をはじめる方、初心者の方の行動を加速させる参考になるお話しでした。
越谷大家さんの著書『越谷大家流!爆発的にお金を増やす!!物件の効率的な購入の仕方と利回りアップ術』には、本日お聞かせいただいたことについて詳細に書かれています。ご興味ある方はぜひお読みください。
越谷大家
株式会社越谷大家代表取締役社長。
1986年生、大阪市鶴見区出身。
メガバンクに3,000万円の起業資金融資を申し込み否決。担保の重要性を実感し、2013年都内に区分マンションを購入し不動産投資に参入。その後2年半で42室・太陽光発電5基のオーナーとなる。
現在は、アパート・マンション9棟、戸建て5件、区分マンション2室の合計85室、太陽光発電6区画を持っています。資産総額にしておよそ5億円。家賃収入6,000万円、キャッシュフロー3,000万円。独自の手法による利回りアップと、効率的な物件購入法が特徴。
多数の不動産投資セミナーに講師として登壇。『楽待』コラムニストとしても活動している。