〈不動産投資家実践ストーリー Vol.21 孫子大家さん〉
不動産投資のメリットは、金融機関から融資を受け、レバレッジをかけた投資ができることです。特に上場企業社員や公務員、医師・弁護士などに「高属性」と言われる方は、金融機関からの評価が高く融資を受けやすい環境にあります。
とは言え、昨今金融機関の不正融資問題などの影響を受け不動産投資物件への融資が引き締められており、高属性の方でも融資付けに苦戦を強いられています。(2019年7月現在)
そんな環境の中多くの不動産投資家が物件購入を断念する一方、有利な条件で融資を受け順調に物件を買い進めている不動産投資家もいます。その違いが何かを知ることが、不動産投資成功の確率を高めます。
「融資を制する者不動産投資を制する」と言われているほど、不動産投資成功には金融機関との関係構築が重要です。
今回は、会社員を続けながら200万円の自己資金を、売却益などで6年で1億円に増やし、2019年にも金利0.68%融資期間7年のオーバーローンや、金利0.68%融資期間20年の融資を受けることに成功している孫子大家さんに、年収・自己資金別に、金融機関といい関係を構築し、融資を受け続けるための秘訣を伺いました。
1,借りたければ「貸し手の気持ち」を考える
編集部:孫子大家さん、今日はよろしくおねがいします。
今(2019年7月)は、金融機関が不動産投資物件への融資を引き締めていると言われています。多くの不動産投資家さんのお話では、そういう状況でも、順調に融資を受けることができている方もいると聞きます。孫子大家さんもその一人ですが、これから不動産投資を始める方にとって、融資を受けやすくなるコツがあれば教えていただけますか?
孫子大家さん:これは、ひと言で言うと、「貸し手側の気持ちになってみる」ことです。
私は、戦略ゲームが趣味で「孫子の兵法」を不動産投資戦略に応用して、自己資金200万円を売却益などで、6年で1億円にすることができました。それは、金融機関を味方につけてきたからこそ実現できたことです。
(関連記事:「孫子の兵法」で自己資金200万円を6年で1億円にした「孫子大家流 不動産投資術」とは)
孫子の兵法の一節に「相手の実情を知って自己の状況や実態を知っていれば、百度戦っても危険な状況に陥ることにはならない。相手の実情を把握せずに自己の実情だけを知っているという状況であれば、勝率は五分五分である。相手のことも知らず、自己のことも知らないようでは、戦うたびに必ず危険に陥る」というのがありますが、それを金融機関との関係構築に活用しました。
2,金融機関にとってありがたい取引とは
編集部:なるほど。どのように活用されましたか?
孫子大家さん:「金融機関は融資を受けようとしている不動産投資家自身や、購入しようとしている物件をどのように評価するのか」という考え方を知って、その考え方にそぐえないと融資を受けることはできません。
ですから、まず不動産投資家として金融機関が評価してくれる状態にすることが重要です。
具体的には、ある程度の年収、自己資金、担保が必要です。その前提があって土俵に乗ることができます。
年収は高いに越したことはありませんが、自己資金とのバランスで評価されます。例えば、年収が500万円で貯金が1,000万円ある場合、自己管理ができる人と評価されます。一方で年収1,000万円でも貯金が200万円しかない場合は、自己管理ができない人と評価されてしまう恐れがあります。ですから、できるだけ自己資金を増やしておくことが重要です。
それから、金融機関にとってありがたい取引であることが大切です。例えば「自己資金500万円のうち100万円を頭金として入れて400万円融資を受けた」これが金融機関にとって、オイシイ取引かどうかを考えてみます。
金利2%だとすると、8万円にしかなりません。金融機関の担当者は、審査のために稟議書を作ったり、申込者と面談したり物件を見に行ったりしなければいけません。決裁までにおよそ30日かかります。それで8万円の収益だと、積極的に取り組みたい仕事とは言えないと思います。
一方、小さくても将来的に大きな取引につながる案件で、銀行のリスク0なら取り組みたいと思うのではないでしょうか。
たとえば、保証協会の保証付き融資や預金担保融資です。自己資金が少ない場合は、保証付き融資、自己資金がある場合は預金担保融資。
最初はそういった商品を利用して借り入れに対して資産価値が大きい物件(一般的には耐用年数内の物件)を買うところを目指す。
そこからは大家としての実績が評価基準となりますから、一定期間満室経営を行い、利益を出すことです。
空室率が高い物件であれば、それを満室にして安定稼働させる実績を作り、一定期間保有した後売却して利益を出し、実績を積みながら自己資金を増やすことができます。ただし、あまり転売回数が多いと逆にマイナス評価になるので注意が必要です。
法人の場合はまず、3期連続黒字を目指すことです。アップダウンが激しくなく、1期から3期まで徐々に業績が上がっている決算書がいいと思います。
そしてきちんと返済を続ければ、銀行がコストをかけて審査しなくてよくなります。すると次の融資を受けやすくなります。
3,自己資金400万円でCF300万を目指す戦略
編集部:ありがとうございます。年収・自己資金別に打ち手を教えていただきたいのですが、まず自己資金は最低限どれくらい必要ですか?
孫子大家さん:今は最低400万円必要です。私が不動産投資を始めた時代は200万円でも始められましたが、今は400万円程度ないと土俵に乗ることができません。ですから、0ベースの人はまずお金を貯めましょう。
貯め方は、2つあります。1つは収入を増やすこと、もう1つは節約して支出を減らすことです。私は節約することはお勧めしません。節約で貯まる金額はたかが知れています。節約するくらいなら本業の他にバイトしたほうがいいと思います。(会社が副業を認めている場合は)
不動産投資家を目指すのなら、バイトは不動産関連の仕事を選ぶといいと思います。例えばベテラン大家さんの物件運営やリフォームのサポート、大工さんの手伝いは勉強になります。不動産業者のチラシ配布は地理に詳しくなります。
また、不動産投資家として大家になると営業のスキルも必要になりますので、テレアポのバイトは営業スキルアップに繋がります。求人情報を検索すると沢山見つかります。また、情報を売って利益を稼ぐ大家の会がありますのでそういうところに入ってみるという方法もあります。
そういった方法でなんとか種銭の400万円を作ることです。それができる前に諦めるくらいなら、不動産投資はやらないほうがいいと思います。
種銭がなくてもできる1ルームマンション投資などもありますが、そういうものはキャッシュフローが出ないし、買った瞬間に損失が出ます。多くの人が、「大家になったつもりで被害者になっている」ということを認識してほしいと思います。
自己資金400万円の人は、金融機関にとってまだまだ小さいお客さんです。また、不動産業者にとっても、質問が多く決断も遅く、連続で購入するわけでもなく、あまりいい客とは言えません。まずこの現実を認識しておくことが大事で、その上でまぁまぁ儲かる物件を買うところを目指す戦略がいいと思います。
そして、400万円で購入した物件を市場で流通する価格で売却し500万円にする。もちろんその他に貯金も続けて、500万円になったらさらに600万円700万円と自己資金を増やしましょう。うまくいけば、ここまで1年〜2年で実現できます。
保有物件数も2件〜3件になっていますので、リフォームについても自分でわかるようになるでしょうし、決算も終わっています。すると、金融機関にアピールできる実績ができますし、自己資金もできる。不動産業者にとっても面倒な客ではなくなります。
ここまで来たら、4,000万円くらいの物件を10%の頭金で購入します。購入にかかる諸経費は物件価格のおよそ7%ですから、それを入れても700万円で足ります。融資額4,000万円(実行額3,600万円)、金利2%なら金融機関にとって年間72万円のビジネスです。これなら1ヶ月かけて審査するモチベーションになると思います。
4,000万円の物件なら、物件スペックや融資条件によりますが、年間100万円〜300万円くらいのキャッシュフローが出ます。それを頭金にまたアパートを購入してもいいし、より安定的に運営したい場合は、ボロ戸建てを買い増ししていく戦略もいいと思います。
4,年収500万円以下の戦略
編集部:年収の面では金融機関の評価に違いがあるのではないかと思いますが、まず年収500万円以下の方はいかがでしょう?
孫子大家さん:金融機関によりますが、年収は450万くらいあれば土俵に乗ります。金融機関の審査で年収はそれほど重視されなくなっています。年収からリビングコストを差し引いて、マイナスになるようだと難しくなります。リビングコストとは、家族の生活費、住居費です。当然ですが、家族が増えれば増えるほどかかるコストは増えます。
年収500万円以下の人は、まず年収を増やすことを目指すか、副業で収入を増やすことがいいと思います。バイトをするとか得意分野の情報をYouTubeで発信して広告収入を得るとか、今はいくらでも稼ぐ方法があります。
私の本業は転職コンサルタントなので、転職して収入アップを目指すという観点でお話すると、年収500万円以下の場合、おそらく会社での評価がそれほど高くないものと思われます。ですからもう少し実績を積んで成果を出してからライバル会社に転職すると年収アップが見込めます。……続きを読む