会社に勤めながらセミリタイアへ近づく新築アパート投資法とは?【後編】〈山崎正一さん〉

不動産投資家実践ストーリー #7> 山崎正一さん

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7,苦労したのは物件の見極め・融資・保証人

編集部:「苦労した点や、失敗談などがあったらお聞かせ下さい」

山崎さん:「一番苦労するのは、良い物件を見極めることです。例えば、東京都23区内で、駅から10分以内の土地にアパートを持てれば、入居が滞るということはまずありませんから、安定した運用ができます。しかし、それで高い利回りが得られるかというと、そうでもないのです。それは、土地が高すぎて、投資金額が大きくなり過ぎるからです。法外な家賃を設定しなければ、割に合わないので、それは事業としては成立しません。そういう土地で不動産事業ができるのは、その土地を相続などですでに所有しているという、恵まれた条件の人だけです。私も、一時は23区内に、そのような土地を探し続けては、何度も、パートナーの不動産コンサルに提案してみましたが、ゴーサインが出ることはなかったですね。膨大な時間の無駄でした。

また、ある時期から経済産業省からの通達があり、銀行が不動産事業への融資に消極的になってしましました。ですので、2棟目の事業を実現するのに、かなり時間がかかりましたし、1棟目に比べると金利が高くなってしまいました。これは、一刻も早く借り換えをするべきなのですが、銀行の姿勢が変わらなければ簡単な事ではありません。もちろん、現在でも6%という利回りを実現出来ているので、そのままでも大きな問題ではないのですが、やはり勿体ないですよね。

また、銀行から融資を受けるには、保証人が必要です。通常、保証人になってくれるのは家族ですから、私の場合は妻の理解を得ることが必要でした。とても苦労をしたというわけではありませんが、妻に一から事業内容を説明し、リスクヘッジが十分に出来ていることなどを理解して貰い、納得して貰うには丁寧な説明を繰り返し行うという努力が必要でした」

8,重要なのは「成功する立地を見極める目を持ったひととタッグを組むこと」

編集部:「不動産投資成功の“コツ”を教えて頂けますか?」

山崎さん:「投資金額と家賃収入とのバランスを取ることが出来る地域を選ぶことです。首都圏ならば、埼玉県、神奈川県など、都内から少し離れてはいるが、渋谷や新宿、東京駅周辺などに通勤が可能な場所。そういう地域ならば、いわゆる「土地持ち」でなくとも、事業を成立させることが可能なのです。少子化の時代ですが、大学などの通学エリアを選ぶのも効果的だと思います。子どもを大学まで進学させる家庭は、親が高収入だと言われています。少し家賃が高くても、『良い部屋に住まわせてあげたい』という親心は、いつの時代も変わりません。知り合いの投資家の方は、高価格帯の物件を建てるのに、病院が通勤エリアに複数ある場所を選びました。目論見は見事に当たって、入居者のほとんどが医師たちです。
また、何度も言いますが“不動産コンサルタント”や建築家などの専門的な知識を持っている人とタッグを組むことです。」

9,大切なのは「入居者の立場になって考えること」

編集部:不動産投資成功のために重要と思う事を、教えて下さい。どういう知識を持ち、どのようなマインドで臨み、どのように行動すべきなのでしょうか?

山崎さん:「まず“デベロッパーは、必ずしも施主の見方ではない”ということを認識することが大事です。デベロッパーは、商売ですから、当然、利益を得ることが目的ですし、建てたあとの運営に責任を持つ必要はありません。サブリースなどでも、入居が滞れば、家賃を平気で落とします。そういう観点からすれば、デベロッパーの言うことは、一度は疑ってみる必要があるかも知れません。

ひとつ、経験談をお話しすると、私がアパートを建てる予定の土地の北側に、同じデベロッパーが作ったアパートが先に建っていました。当然ですが、私のアパートが南側に建つと、陽当たりが悪くなり、窓からの景色は、私のアパートの裏側の通路という状況になってしまいます。おそらく買い主は、そこまで将来の事を想像することはなかったのでしょう。また、購入前に現場に足を運んでいない可能性も高いですね。実際に現場に立っていれば、容易に気づくことができるはずだからです。さらに、デベロッパーも先に南側を売ってしまうと、北側の土地が売れなくなってしまうので、そうした計画があることを伝えていなかった可能性が高いです。デベロッパーは、両方の土地にアパートを建てて売りたいわけですから。結果は、私の物件は、周辺相場より高い家賃ですでに満室ですが、裏手のアパートは、常に空き部屋が複数見かけられます。ここから言えることは、購入を決める前に、必ず現場を訪れて、周辺環境などを確認することでが大切だということです。

税金に関する知識も大切です。不動産を所有すると、不動産取得税や固定資産税などが必要になります。また、別に本業があり給与所得がある人は、収入がアップする分、住民税・都市計画税などが高くなります。これを忘れていると、資金ショートに繋がりかねません。
そして、内装や外構部分への投資をケチらないこと、“自分でも住みたいと思えるアパートを目指す”という気持ちで臨めば、例えば都内でよく見るような、自転車置き場がなく玄関周りに錆び付いた自転車が犇めいているというようなものは、作りたくないでしょう。

また、内装でもクローゼットに、ちょっとオシャレな壁紙を貼ってみるといった、細かな工夫が、意外と周辺物件との差別化につながります。
私は、デベロッパーから出来合のアパートを購入しましたが、建築家の方に監修して頂き、外構部にはデベロッパーがやらない工夫を施すため、一定程度の資金を使いました。植栽を上手く配置し、敷石などの素材もなるべくオシャレなものを選びました。所有している2棟とも、駅から徒歩15分ほど距離があるため、自転車置き場の確保は絶対条件でした。外観は、入居希望者がその物件に抱く第一印象につながるため、なるべく美しくなければなりません。

とは言え、初期投資をし過ぎると、回収するのに時間が掛かりすぎ、利回りが落ちてしまいます。どの程度の投資をして、どの程度の家賃を取れるのか、そのバランスが重要です。慎重に考え抜いた末に、行動するときは大胆に、外野の意見などに惑わされず、自分を信じて行動することです。その基本となるのは、やはり“入居者の立場になって考える”という意識を常に忘れないことです」

10,不動産投資で精神的余裕が生まれ人生の選択肢が増えた

編集部:「不動産投資をやってこられて、良かったなと思うことはなんでしょうか?」

山崎さん:「実際に、セミリタイアするかどうかは別として、不動産事業をやることで、精神的な余裕ができます。“いつまでも会社にしがみつかなくて良いのだ”と思えるようになります。すると、案外、本業の方もうまく行ったりするものです。また、かねてから海外で生活をしてみたいと思っていましたが、不動産事業が順調であれば、日本にいる必要もなくなりますから、そうした漠然と考えていた夢を、具体的に描くことができるようにもなります。
つまり、人生の選択肢が増えるわけですね」

11,誠実な不動産投資家でありたい

編集部:「ご自身、不動産投資家として、どんな在り方を目指していますか?」

山崎さん:「誠実であることです。具体的には、できるだけ良い物件を作って、周辺よりも高めの賃料だけど、入居したいと思われる物件をつくることです。貸し主である私も、入居者も、双方が満足できるような物件を作り、適正に管理していきたいですね。」

12,専門家の知識を借りて安心・安全な不動産投資を実現

編集部:「これから、不動産投資を始めるという方に、アドバイスをお願いします」

山崎さん:「意外かも知れませんが、まずは自宅を所有することです。自宅を持っていれば、担保になります。莫大な貯金を作ることができるのなら別ですが、現金を使わずに貯めるよりも自宅を所有する方が、家賃の節約にもなり、銀行からの信頼も得ることが出来ます。
そして、先にも言いましたが、不動産コンサルタントや、知識が豊富ならば近所の不動産屋さんでも良いですが、相談に乗って貰えて、具体的な提案をしてくれる、信頼できる仲間を見つけることです。やはり、専門家の知識は、様々な局面で役にたちます。裁判を起こすのに、弁護士が必須なのと同じことです。そして、その人にはキチンと、コンサル料を支払いましょう。また、建築家の方と顧問契約を結び、監修して貰うのも効果的です。先に述べた外構部のデザインだけでなく、工事が適正に行われているか、チェックして貰うこともできます。先日、大手デベロッパーが不正工事をしていたことが発覚し問題となっていますが、そのような素人目には気づけない不正も防ぐことができます。そして、計画から、竣工、入居開始、清掃など日々の管理などに実際に携わり、少しずつ知識と経験を蓄積していけば、やがて一人で運営できるようになるでしょう」

13,不動産投資は人間としての幅も広げる

編集部:「個人的な事を伺います。不動産投資を始める前と今で生活が変わりましたか?」

山崎さん:「先にも言いましたが、本業の会社との距離感が変わり、精神的な余裕がでます。
一方で、様々な問題は日々発生しますから、それに対応する柔軟な心持ちも必要になりました。それは、自分の人間としての幅を広げてくれているようにも思います。」

編集部:「山崎さんはどういった信条をお持ちですか?」

山崎さん:「入居者の気持ちになって考える」です。

編集部:「不動産投資に関する今後の目標をおしえてください」

山崎さん:「売却による、キャピタルゲインです。出来れば、数千万円の利益を出したいと考えています。出口戦略として、そうした成功体験を一つは持っておきたいですね」

ありがとうございました。
山崎さんのお話しから感じたことは、不動産コンサルタントや建築家などの専門家とのタッグの組み方がうまいということです。本業が不動産業とは異なる業種の場合やはり不動産投資業界に精通した専門家のアドバイスや指導を受けることが欠かせません。そのときに、自分が目指す姿に導いてくれる相手か、信頼できる相手かを見極め、専門家と二人三脚で不動産投資を行うことが重要になります。そのためにはまず自分自身の不動産投資スタイルを決める軸となる、目的・目標・ありたい姿が明確になっていなければいけません。山崎さんは、しっかりとした軸を持っていたからこそ成功を手にすることができたのではいかと思います。

インタビュー実施2019年3月

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