元不動産業者が語る月間キャッシュフロー50万円を目指すロードマップ【後編】〈安藤しげきさん〉

<不動産投資家実践ストーリー #5> 安藤しげきさん

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5,元不動産業者が明かす「割安物件」の見つけ方

編集部:ありがとうございます。安藤さんはご著書の中で「物件を買うときに、相場より安く買うことが重要」ということを書かれていますが、具体的にどういった方法で安く買っていますか?

安藤さん:不動産には相場がありますが、基本的には相対取引です。つまり、売り手側の「売りたい金額」と買い手側が「買いたい金額」が合致すればそれで取引が成立します。ですから、相場より安く売っているものを発見できればいいのです。売り手側が売りたい事情は様々なので、「楽待」「健美家」「homes」などの不動産ポータルサイトに掲載されている物件の中に必ず割安な物件があります
ポータルサイト以外に、そのエリア内にある不動産業者を訪問して、該当する物件の売却依頼を受けたら紹介してもらえるように依頼すると、未公開物件情報が得られる可能性もあります。

見つけ方は、まず自分がどのエリアにどういう物件を持ちたいのかを明確にします。そしてそのエリア内で、構造・築年数・立地が似た物件を数多く見ることです。物件情報を数多く見ていると、買いたい物件の特徴がわかってきます。

見るところは表面利回りです。例えば見ている物件の多くが利回り9%前後だったとします。その中に利回り12%の物件があったらそれは割安である可能性が高いです。そういう物件を見つけたら、なぜ利回りが高いのかを調べていきます。そして特に変わった事情がないのに利回りが高ければ、売り手が急いで売りたい事情がある物件だったり、値付けを間違えている可能性があります。それが割安な物件です。裏ワザはありませんので、とにかく数多く物件を見て、身体で覚えるしかありません。そういう地道な努力が必要です。

6,ほとんどの初心者が間違えている「物件探しの順番」

編集部:なるほど。地道な努力を続けることが割安な物件を手に入れる秘訣ということですね。「どういう物件がほしいのかを明確にする」というところでもう少しお聞きしたいのですが、安藤さんはそのためにどういったことをしていますか?

割安な物件を探す前にまず、不動産投資を行う目的と目標をハッキリさせておかないといけません。たとえば、今の自分に必要なお金が「月に10万円のお小遣い程度」でいいのであれば、500万円程度の中古区分マンションを買えば達成できる可能性があります。一方「月に50万円のキャッシュフローを得たい」ということになると、合計2億円程度の一棟マンションやアパートを所有する必要があります。

それから、もっと大事なことは、今の自分がどの金融機関からいくら融資を受けられるのかを知っておくことです。

不動産会社で営業をしているときに対応した不動産投資初心者は、自分がいくら融資を受けられるかを調べていないため、自分が買えない価格の物件を探していました。そういう人が本当に多いです

せっかく不動産投資のゴールを明確にしても、物件が買えなければスタートできません。ですから、買いたい物件を見つけたらまず不動産業者を通じて、銀行に融資の打診をしてもらうことが大事です。それをいくつかやっているうちに、金融機関の審査基準がどういうものなのかがわかってきます。積算で評価するところもあれば、借り手の属性重視のところもあります。収益還元法で考えるところもあります。それを知ることで自分がどういう物件を買えるのかもわかってきます。それがわかってから不動産投資の目標設定をしたほうがいいと思います。

7,成功した不動産投資家が語る7割の真実

編集部:ありがとうございます。最後に、これから不動産投資をはじめる人にアドバイスをお願いします。

安藤さん:繰り返しになりますが、まず知識を増やすことがだいじですね。知識がないと悪徳業者におかしな物件を掴まされてしまったりすることがあります。そうならないためにも、必ず1日30分は不動産投資の書籍を読む、不動産情報サイトを見る、物件情報を見るなどとルールを決めて勉強をしたほうがいいと思います。

それから、不動産投資成功にはできるだけ新しい情報を掴んでおくこともだいじです。そのために、ネットで「大家の会」を検索して、そういうところへ参加するのもいいと思います。そして自分に合う大家の会を見つけてそこで出会う先輩大家さんが開催している不動産投資セミナーに参加するのも勉強になります。

そのうちに、多くの成功している先輩不動産投資家が言っていることの70%くらいは同じことだということがわかってきます。それが不動産投資成功の法則ではないかと思います。それを自分なりに実践して試行錯誤を続けることで成功パターンが見いだせると思います。

それから、不動産投資は金融機関との信頼関係を構築して、「銀行が融資をしたい人」になることが重要です。ですから、銀行にも誠実に対応するべきです。

それから、過度に積算価格を重視するのは危険です。積算価格は、土地と建物を別々に現在の価値で評価し、それを合算した評価額のことをいいます。
土地の価格は国税庁が発表している「相続税路線価」をもとに計算されるのですが、相続税路線価の高さ=土地の実勢価格ではないのです。積算評価が高い物件は銀行融資審査で有利になることが多いので、人気が高いです。しかし、リスクも高いです。

特に地方の場合、土地に対して需要が低いため相続税路線価より実勢価格が低いことが多いのです。「実勢価格」というのは、実際に取引が成立する価格です。ですから、そういう場所にある「積算オーバー」物件には注意が必要です。土地の価値が低いエリアだからです。

積算評価にこだわって物件選びを続けていると、最終的に「ババ抜き」になってしまいます。
融資を使ってレバレッジをかけて買う場合、どこかで売却するのか、持ち続けるのかを考えた上で購入しないといけません。

売却する場合はタイミングを間違えると出口が取れなくなります。積算評価で買った物件は積算評価で売るというのがセオリーとされていますが、積算の価値がなくなったとき出口がなくなります。具体的には、建物の耐用年数が切れたときは積算評価が下がります。たとえ土地値であっても、積算の基準となる路線価と実勢価格が乖離していれば、積算価格は意味のない数字です。だから、実態がない積算価格ではなく、実勢価格で購入するのがもっとも安全な買い方だと思います

編集部:地方で相続税路線価より実勢価格が低いところでの積算評価重視は危ないということですね。逆に都心部であれば安全ということになりますか?

安藤さん:そうですね。将来的に「土地値で売却できればいい」という場合には、やはり都心部です。東京は人口が増えていますし、土地値も安定しているからです。
以前池袋で家を買おうとしたことがありました。その土地はひと坪200万円でした。1㎡約60万円です。一方相続税路線価は1㎡25万円でした。それだけ高値で安定しているということです。

編集部:実勢価格はどこで調べられますか?

安藤さん:実勢価格は、「土地総合情報システム」、「SUUMO」、「at home」で調べられますので、参考にしてもらうといいと思います。

8,元不動産業者が語る「こんな物件があれば買い!」

編集部:ありがとうございます。ご著書の中に、元不動産業者さんの観点から、「こんな物件があれば買いだ」ということが書かれていますが、このお話を少し聞かせていただけますか。

安藤さん:はい。本には8つ書きましたが、3つだけお話します。
ひとつは、1都3県の土地値物件です。土地+建物を土地の実勢価格で買える物件ですね。
具体的には、国道16号線の内側からプラス車で30分くらい、山手線のターミナル駅から1時間くらいのエリアが狙い目だと思います。

都心部は圧倒的に人口が多いですし、高属性の割合も高いです。ですから、売却しやすく出口が広いわけです。東京23区でも周辺部や千葉・埼玉・神奈川までエリアを広げれば、普通のサラリーマンでも購入できる物件を探すことはできます。

もうひとつは、オーナーチェンジ物件を購入して、マイホーム用として売ることですね。これは区分マンションですが、都内の立地がいい場所に30㎡〜70㎡くらいの物件を買います。30〜70㎡だと住宅ローンが使えるからです。それを一定期間収益物件として運用し、入居者が退去したところでリフォームしてマイホーム用として売る方法です。立地がよければ、新築より安く買えるとあって一定のニーズがあります。

最後は、築古戸建てや築古の団地を買ってリメイクして販売することです。割安で売られている東京都周辺部の築古戸建てや団地を探して購入します。それをリメイクして売却する方法もあります。団地は、持ち主が亡くなって相続したものの、だれも住む人がいないという理由で売却されることも多く、「いくらでもいから売ってしまいたい」という人もいます。だから、割安物件が出る可能性が高いです。

大きな団地では、スーパーや保育園、郵便局などの施設があり、そのコミュニティだけで生活が成り立ってしまうところも多くあります。団地には外部の人にはわからない独自の利便性があります。団地は築40年以上経っているものが多いので、団地で育った人が一旦離れて、また団地に戻るケースもあります。団地にも一定のニーズがあるのです。

やり方はたくさんありますので、自分にあったやり方を見つけて試行錯誤しながらやってみるのがいいと思います。


ありがとうございました。
不動産売買の現場を知り尽くした人ならではの、臨場感あるエピソードを聞くことができました。

想像以上に不動産投資に失敗し、「不動産凍死家」になってしまったひとは多いようです。わたしたち不動産投資初心者が、失敗を避け、最短で目指すゴールを達成するためのヒントとして今回のインタビュー記事を活用してもらいたいと思います。

記事の中にある、不動産投資成功につながる「よい物件の探し方」「こんな物件が買い」という情報や、「買わないほうがいい物件」の情報を更に詳しく知りたい方は、安藤しげきさんの著書『不動産投資しないための大家の凍死の教科書』を読んでみてはいかがでしょうか?

※インタビュー実施 2019年4月

安藤しげき

1985年愛知県生まれ、岐阜県育ち、宅地建物取引士・ファイナンシャルプランナー2級・住宅ローンアドバイザー。
株式会社Estate&you 代表取締役兼不動産大家。不動産会社で約10年間勤務しながら、将来への不安をいだき、自身も不動産賃貸業を開始し不動産大家となる。当時の銀行側から見るわたしの属性はかなり低く、融資や物件選定では苦労をする。お金を貸す銀行はなかなか自営業のような歩合給のサラリーマンには融資をしてくれなかった。属性は悪いながらの物件選定や、自己資金を貯めながら売買を繰り返し、現在は資産総額3億円超(年間家賃収入3,400万円)。不動産会社に勤めていた経験を活かし、将来売れる不動産を選定することに力を入れている。不動産投資をあらたに行う方へのサポートを目的とした個別相談も行う。

■安藤しげきさんの著書
不動産凍死しないための大家の投資の教科書

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