<不動産投資家実践ストーリー Vol.18 大城幸重さん>
今回の不動産投資家実践ストーリーは、15歳のときからお祖父様のもとで大家業を学び、教員として勤める傍ら長年大家として活動されている地主系大家の大城幸重さんです。所有物件は東京、京都、北関東、海外に9棟35室、太陽光発電所10基。大城さんはご自身の賃貸経営を「大家道」と表現されています。教師歴25年の中で、小学校・中学校・特別支援学校・海外日本人学校など、いくつもの教育現場で多様化したニーズをもつ子ども達の教育を手がけてきた元熱血教師。それだけに、賃貸経営のコンセプトは「子育て賃貸」。住まう人が快適に暮らせる住環境を提供することで、人間力が高い人に育ってほしいという想いを反映させたデザイナーズ・アパート経営を実践されています。大城さんの物件は、ライバル物件より家賃が5,000円~10,000円高いにもかかわらずほぼ満室の人気物件ばかり。その秘密は、大城さんの「大家道」の根底にある理念にあります。満室経営を実現する軸となる理念とは?
1,教育を軸にした住環境を作る大家業「大家道」とは?
編集部:大城さん、本日はよろしくおねがいします。早速ですが、15歳のときからお祖父様のお手伝いで大家さんをしてきたということですが、不動産投資のご経歴をお聞かせいただけますか。
大城さん:はい。大家業に関わったきっかけは、私が15歳のときに父が亡くなり、祖父が持っていた長屋式アパート運営の手伝いをするようになったことからです。そこから数えるとキャリアは36年になります。祖父から教えられた大家の心得「大家道」をもとに大家業をやってきました。だから、私は不動産投資家というよりも、大家なんだと思います。
編集部:そういうことなのですね。「大家道」というと具体的にはどういうことをされてきたのですか?
大城さん:はい。私はこれまで一貫して住まう方が「安全で安心、快適な生活が送れるように」ということを心がけて大家業とアパート創りをやってきました。
なぜ「大家道」と言っているかというと、私が祖父から教わってきたことが根底にあります。祖父は、貧乏なところから裸一貫で財を成していった男で、「町の人々にお世話になってここまでなれた。だから、いつか町のために役立つことをしたい。」という思いをもっていました。
当時は高度経済成長期で、加速する人口増加に対応できるように、町への恩返しの意味を込めて、長屋式アパートと幼稚園を作りました。祖父他界後、アパート経営を引き継ぎ、母と二人三脚で大家業をやってきました。その根幹となっていることが祖父の教え「大家道」です。
この祖父の教えをもとに、元教員だった母と私で考えたことが「よい住環境がよい子を育てる」という人が育って行く場作りとしての大家業でした。この二つの考えをベースに、「育ててもらった町への恩返しのため、人を育てる住環境づくりをする」という理念が生まれました。
人を育てる住環境づくりとは、家族の心に安らぎが生まれる住まいを提供するということです。家族の笑顔のもとで愛情をいっぱいに受けた子どもたちが、家族とその周りにいる人たちからも大切にされ、心豊かな人財として育っていく。そんな人財育成の場となることを考えアパート創りをしてきました。日本の未来を担う子どもたちがすくすくと育っていくための住環境「子育て賃貸」というコンセプトで賃貸住宅経営を行っています。その意味で、大家業というのは教育業であると考えています。
2,よい子を育てる住環境づくり3つのポイントその1整理整頓
編集部:なるほど。「教育を軸にした住環境を作る大家業」ということですね。では具体的に住環境が子育てにどういう影響を及ぼしているのでしょうか?
大城さん:はい。3つほどあります。まず1つ目は整理整頓です。住まいが整理整頓しやすい場であることが重要と考えていますので、私の最新のアパートは入居者さんが整理整頓しやすくなるよう至るところに収納を設けるようにしました。私自身が最初に作った子育て賃貸第1号に私が実際に住んでみて、子育てをする中で、不便に感じたところを改善しています。
最初に作ったアパートに自分で住んでみた時に、収納スペースが少なく整理整頓しにくかったのです。また、ロフトを収納場所として作ったのですが、はしご式でとても使いにくいということがわかりました。
それから、寝室が狭いということもわかりました。夫婦のベッドとしてクイーンサイズのベッドを置いて、その隣にベビーベッドとベビー用品の棚を置くと6畳は目いっぱいになって足の踏み場もなくなってしまいます。狭い寝室は、子どもと一緒に休む寝室にならないということもわかり、そこも改善しています。
編集部:寝室が狭く整理整頓しにくい部屋だと快適に暮らせず、それが原因で夫婦関係がギスギスすることにつながる可能性がある。そして、子どもはそれを感じ取って心地よい気持ちになりにくいということですか?
大城さん:はい。子育ては、子どもが育つだけでなく親も共に育っていく場だと考えています。まず親が快適に生活できる場を作り、それによって親が居心地よい生活を送ることで心が安定し、子どもに向き合う時間が増え子育ての質が上がっていくという好循環ができると考えています。
編集部:住環境は住む人の行動に影響することもありますか?
大城さん:データを取って詳しく調べたわけではありませんが、住環境が整っていないと心も整わず、何かしらの悪影響があるのかもしれません。
それは祖父の手伝いをしていたころから実感していました。実際に、祖父の手伝いをしていたころの長屋式のアパートでは、建物の周辺にゴミを散らかしている家庭がありました。その方には結局夜逃げされてしまったのですが、その部屋に行ってみると収納が少なく家の中がかなり散らかっていました。それを見た時に、やはり整理整頓しにくい環境だと乱雑になりやすく、人の心の状態にも影響するのだということを感じました。
有名な多くの経営者の方々も「会社を良くするためには整理整頓やお掃除が大事」ということを言っています。
3,よい子を育てる住環境づくり3つのポイントその2コミュニケーション
編集部:ありがとうございます。よい子育てにつながる2つ目のポイントは何ですか?
大城さん:はい。2つ目はコミュニケーションです。このアパートは、外に遊び場を設けています。入居者の方々は、お子さんを自分のアパートの目の前で遊ばせることができます。それによって遠くに行かずにすむので、お母さんたちは安心できますし、近所のお子さんたちと一緒に遊ぶこともできるので自然にコミュニケーションを学ぶことにつながります。
こういった周辺環境も含めた「子育て賃貸」は23年前に祖父から物件を受け継いだ際に、物件全体を建て替えるときのために構想してきたものです。ここに1つの街を創り出すという想いで建てています。
編集部:お部屋の中にも、良いコミュニケーションを作るために工夫されているポイントがありますか?
大城さん:はい。最新のアパートは、リビング16畳でその隣に6畳の部屋を作っていますが、扉を開放するとリビングが最大22畳になるようになっています。できるだけ仕切りをなくし、コミュニケーションが取りやすいように工夫しています。
大きくなったお子さんたちの子供部屋として使ったときには、リビングから声をかけやすいようにしています。
編集部:子育てにおいて、子どもが目の届くところにいるということは重要ですか?
大城さん:はい。特に思春期前の幼少期に子どもが親から「いつでも見守ってもらっている」という安心感を得る意味でとても重要です。
私のアパートは、自然に親子がコミュニケーションを取れることや、子どもが勉強しやすいリビングなどを考慮したアパートになっています。
セキスイハイムさんと教育者の隂山英男先生のコラボで「子どもが賢く育つ家づくり」というコンセプトの家が企画されています。その企画でも、親子のコミュニケーションが取りやすい間取りや子どもが勉強しやすいリビングが推奨されているほどです。
4,よい子を育てる住環境づくり3つのポイントその3地域環境
編集部:ありがとうございます。子どもが安心できる「セキュアベース」を作りやすく考えられているように感じます。整理整頓、コミュニケーションに続いて3つ目はどういったことでしょうか?
大城さん:はい。3つ目は地域環境です。私は地域環境が重要だと考えています。地域環境を整える意味でゴミ拾いをやっています。
このアパートのある場所は、月曜日と木曜日が可燃ごみの日となっていて、近くの道路に設定された集積場までごみを持っていかなければいけません。その時に空き缶やタバコの吸殻、アイスの袋、コンビニの袋ゴミなどが散らかっていることがあります。それを片付けて、街の荒れにつながるものを摘み取るという活動をしています。
編集部:なるほど。「自転車カゴの法則」でしたっけ?放置自転車のかごにゴミが1つはいると、次々にゴミが投げ込まれていくという。そういうことを防ぐということですか?
大城さん:はい、そうなんです。そういう意味でゴミ拾いを続けています。
また、繰り返しになりますが、アパートの外にある子供の遊び場を通して、地域の人たちとの交流が生まれることも、地域環境を整えることに繋がると考えています。
昔あった隣近所での「お醤油の貸し借り」ができるような地域コミュニティーになってくれるといいなと思っています。
ただし、今はお節介しすぎるのは嫌がられるので、「付かず離れずの距離感」が大事になると思います。災害やトラブルなどがあったときに大家さんが入居者さんを見守るという、時代にあった適切な距離感、困った時に助けてもらえるほどよい距離感での快適さの提供を心がけています。
先日もトイレが詰まった入居者さんがいて、「大家さんトイレが詰まってしまったんです。助けてもらえませんか。」「パッコンありますか?」と、やりとりしました。“パッコン”というのは、排水管の詰まりをとるラバーカップのことです。無いということだったので、それを持って行って直ぐに対応しました。
入居者さんは遠方から転勤などでこられた方も多いので、「何かあったら大家さんを頼ればいい。」といった安心感を持ってもらえるようにしています。
5,「またあそこに住みたい」と言ってもらえる場所を目指して
編集部:なるほど。そういうことなのですね。別の場所にも物件をお持ちですがそちらも子育てをテーマにされていますか?
大城さん:いいえ。そちらの物件は私が土地から購入して創った物件ですが、DINKS向けのスタイリッシュなデザイナーズ物件にしました。
私のファミリー世帯のアパート「子育て賃貸」で育ち、巣立っていった子どもたちが、大人になった時に、自分のパートナーとなる人と仲良く住んでほしいという想いを込めて創りました。
編集部:ありがとうございます。入居者さん家族の人生を長期的に見た賃貸経営をされているのですね。
大城さん:はい。私は100年先の未来にもこの場所に同じ風景を残したいと考えています。自分のアパートで育った子どもたちが、住み心地の良さを覚えていてもらって、「またあの家に住みたい」と言って戻ってきてくれるほどいい住まいを創りたい。戻ってこなくても、「自分もああいう家を創りたい」と思ってくれるような場所を創りたい。人づくりの場、思い出作りの場になってほしいと考えています。
編集部:「またあの家に戻りたい」と言ってもらえるくらいの場所を目指して住環境づくりをされているのですね。
大城さん:それが自分の賃貸経営の質にかかわってくると思います。やはり、お客様から喜ばれるアパートを作れば、わざわざ空室対策を講じる必要はありません。自分の使命は、「お客様に快適な住環境を提供すること」だと考えています。
自分の理想を追い求めてアパート創りを行ってきています。その軸にあるのは「人づくりの場」ということです。……続きを読む
大城幸重さんの著書:『高家賃でも空室ゼロ! これからの不動産投資は地方の新築デザイナーズアパートが狙い目です』
オフィシャルサイト
http://ohshiroyukishige.com/
所有物件サイト
http://g-rooms.co.jp/ridge/