高家賃でも満室経営を実現する元熱血教師の「大家道」とは?【後編】

<不動産投資家実践ストーリー Vol.18 大城幸重さん>

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6,なぜか子宝に恵まれる「子宝賃貸」

編集部:ちょっと話が変わりますが、大城さんの物件に入居された方が、何か生活にいい変化があったというようなお話はありますか?

大城さん:そうですね。うちのアパートに入居して赤ちゃんが生まれた方が多いです。たまたまそういうタイミングでご入居されるからかもしれませんが、「子宝賃貸」でもあるかもしれません(笑)

編集部:快適な住まいなので、ストレスが少なくて、夫婦仲がよくなったということもあるのかもしれませんね。

大城さん:そうですね。データを取ったわけではないので根拠はありませんが、本当に不思議なくらい入居中に赤ちゃんが生まれる方が多いです。

7,学校教育のエッセンスを賃貸経営に

編集部:ありがとうございます。ところで、学習塾も経営されているのですね?

大城さん:はい。私は一昨年まで25年間教員をやってきましたが、子どもたちにはこれからの未来を生き抜くために本当の力を身に着けてほしいと考えています。

1つは日本人の思考のもとになる国語力、2つ目はこれからさらに発達するITに対応するために重要になる数学力、そして国際環境に対応できる英語力です。

特に重要なのは、コミュニケーションツールとしての国語と英語ですが、根幹となるのは人間力です。人間力がないといくら国語ができても英語ができてもいいコミュニケーションは取れません。さらに相手の気持を慮る心を持たないといい世界は作れません。それも含めた教育を行うための塾です。

私が学校で教員をしているときには、日々の生活が忙しく深く感じることができませんでしたが、日本の学校はいい教育を行っていたんだなと思います。
学校という組織から出てみて思うことは、「挨拶」「返事」「整理整頓」「約束を守る」
「自分の周りにいる人を大切にする」といった学校で行われてきている基本的な教育、道徳教育が間違いなく世の中を作るベースになっているのだということを外に出てみてより強く感じています。

編集部:学校の道徳教育の中に、人間力を高めるエッセンスが詰め込まれているということですか?

大城さん:間違いなくそれが根幹になっています。教育は人づくりが根幹で、「人間力を高める」ことが本来の教育です。受験や眼の前のハードルに忙殺されて、本当の教育が忘れ去られているのではないかと思っています。

私は学校で子どもたちに伝えてきた言葉があります。
「人の涙の上に自分の幸せを築くのではなく、人の笑顔とともに自分の幸せを築ける人となれ」ということ。自分と同じくらい他人も大切にしないといけないということです。
そういった想いを学習塾だけでなくアパートにも詰め込んでいます。

8,他人を思いやる気持ちを育む仕掛けがあるアパート

編集部:ありがとうございます。ところで、道徳心を育むために、建物に工夫されているところはありますか?

大城さん:そうですね。たとえばアパートの遊び場やウッドデッキに遊具を置いているのですが、そういうものを譲り合って使うことも学ぶ機会につながると思います。

あとは、狭い階段幅だと使いづらいので私のアパートでは既製品の120cmのものではなく、入居者さんが大きな荷物でも2階に運びやすくするために、特注で作った階段幅180cmに広げたものを使っています。こんなところから他人を気づかうことが大切なんだというヒントを得てもらえればいいという願いもあります。

編集部:子どもたちにとっては遊びを通じて人とのつながりの中で、自然に道徳心を育める仕組みを作っているということですね。そして察しが良い大人にとっても学びになる仕掛けがあるということでしょうか。

大城さん:そうですね。学校教育でもそうですが、押しつけの教育には反対です。自ら自然に気づけるようにしておくことが重要です。

編集部:なるほど。教員さんならではのアイディアが盛り込まれた賃貸住宅なのですね。

大城さん:はい。住んでくださる方が笑顔になれるような賃貸住宅になってくれるといいなと考えています。人に喜んでもらえることをしていれば、その人から感謝されることに繋がると思います。人を喜ばせていくことの積み重ねが、回り回って自分に戻ってくるのだと思います。そこに後から自然とお金がついてくるようになるのだと思います。
それが祖父から教えてもらった恩送りということです。次の人財を育てるために小さなことから一歩ずつ行動していくことが私の役割だと考えています。

9,地域コミュニティーの活性化に注力したい

編集部:ありがとうございます。よくわかりました。それが「大家道」ということなのですね。 さて、現在、北関東大家の会を立ち上げ活動しているとのことですが?どのような活動をされているのですか?

大城さん:はい。「不動産投資は社会貢献の心で!」を理念に不動産に関わる大家さん、入居者さん、健全な業者さん、地域の方々など、すべての方々に幸せをもたらす不動産投資の輪を広げる活動を行っています。

編集部:今後の目標をお聞かせいただきたいのですが、大家さんとしてどういったところを目指していますか?

大城さん:私の夢なのですが、最近は地域コミュニティーが崩壊しているとか地方に元気がないとかと言われています。その原因には、いろいろあると思いますが、少子化や高齢化の問題が大きいのではないかと思います。それに伴って空き家や賃貸住宅の空室も増加する一方です。この問題に向き合っていければと考えています。

空き家を活用して、高齢者と孫世代の子どもたちが関わりを持てる場をつくり、そこが高齢者にとって生きがいを感じられる場となり、子どもたちにとっては学びを得られる場となる「子育て寺子屋賃貸」というものを創ってみたいと考えています。
「子育て寺子屋賃貸」を通して、現代社会に合った新しい形のコミュニティーの形成。お節介のない、付かず離れずのほどよい距離感での相互扶助の場「ご近所家族」の輪を全国に広げていきたいと考えています。

編集部:これは少子高齢化問題や、空き家問題などの社会問題解決に繋がりそうですね。

大城さん:はい。現在、私の母は目が不自由になったため老人ホームに入居しています。
自宅に住んでいたころと勝手が違い、家に戻りたいと言っています。年取った母が家に戻った際に生きがいとなるものがあること、それが元気の源になります。
そのときに、このようなコミュニティーがあれば、子世代、孫世代との関わりの中で「おばあちゃん。ちょっとお願いできる。」と、頼られることが生きがいに繋がるのではないかと思います。「おばぁちゃんの知恵袋」のような知恵の伝承にも役立ちます。それを「空き家」を活用することで行えば、空き家の有効活用にもなると考えています。

10,これから大家になりたい方へ

編集部:最近は、賃貸物件への融資が引き締められていますが、サラリーマンがこれから賃貸経営に参入しようとする場合、どういった方法が考えられますか?

大城さん:そうですね。私のメインバンクも、新規の方にはなかなか融資をしてないようです。ですからこれから融資を受けて参入するのはかなりハードルが高いと思いますが、これだけ空室が多くなってくると、転貸も可能という大家さんも出てくるのではないかと思います。

その空室を活用した社会性が高いプランと想いがあればわざわざ融資を引かなくてもできることがあるのではないかと思います。そういう観点で考えてみるのも一つの方法だと思います。

編集部:最後に、これから賃貸経営をはじめる方にアドバイスをいただけますでしょうか?

大城さん:はい。大家の仕事はそんなに楽ではありません。不労所得ではなく、「苦労所得」なんではないかと思います(笑)

ですから、まずは覚悟を持ってやってもらいたいと思います。もし、「ラクをして不労所得を得られる」と思っているようならば、それは恐らくうまくいかないと思いますので、参入しない方がいいと思います。

入居者目線でいい住環境を提供するということを楽しめる方なら、大家さんに向いていると思います。

大家さんは楽しいです。特に「ありがとう」と感謝された時には、こんなに嬉しいことはありません。社会貢献として取り組んでいく姿勢を持った人にとっては、みんなを幸せにできるとても素晴らしい仕事です。

ありがとうございます。
大城さんのお話の中で、住む人が帰ってきたときに「ホッとできる場であってほしい」という言葉が印象的でした。また、入居者だけでなく、コミュニティー全体をいい場所にしていきたいという熱い想いを感じました。
「他人を慮る気持ちが大事」「入居者さんに喜んでもらえることをやっていれば自然とお金はついてくる」といった賃貸経営だけでなくどんなビジネスにも共通した原理原則に気づかせてもらえたようにも感じます。
元教員さんならではの、「子育て賃貸」というコンセプトの賃貸経営で人間力が高い人を育てたいという熱い想いを持って「大家道」を突き進む大城さんから学べることは多いのではないでしょうか。

さらに具体的なデザイナーズアパート経営の手法は、大城さんの著書で学べます。
『高家賃でも空室ゼロ! これからの不動産投資は地方の新築デザイナーズアパートが狙い目です』

オフィシャルサイト
http://ohshiroyukishige.com/
所有物件サイト
http://g-rooms.co.jp/ridge/

大城幸重

1968年生まれ。地主大家とサラリーマン大家の両方の経験をもつ専業大家。株式会社クレセール代表取締役。新築デザイナーズ・アパートプロデューサー。ファイナンシャル・プランナー。賃貸不動産経営管理士。
裸一貫から身を立て、長屋式アパート経営をはじめた祖父のもとで育つ。「お世話になった地域に恩返しを」「働かざる者食うべからず」を信念に持つ祖父のもとで、15歳の時に、長屋式アパートの清掃と家賃回収を手伝う形でアパート経営の世界へ。1棟ものの中古マンションで入居付けに苦労するなど、様々な失敗を経て、土地からプランニングするデザイナーズ・アパート投資にたどり着く。

建築したデザイナーズ・アパートは、外観デザインに特徴があり、居住空間にもゆとりがあるため、キレイな街並みと生活しやすい住空間を生み出している。アパートのデザインには、ヨーロッパ生活で身につけたセンスを取り入れており、イギリス、アメリカ、イタリアなど5カ国の海外デザイン住宅サイトや国内デザイン住宅雑誌「LIVES」に取り上げられる。現在、東京、京都、北関東、海外などの国内外に不動産、9棟35室、太陽光発電所10基を所有する。

株式会社クレセール
群馬県高崎市倉賀野町1807-6

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