<不動産投資実践ストーリー #9> 元理系サラリーマン大家 溝口晴康さん
【この記事のPOINT】今回の不動産投資実践ストーリーは、元理系サラリーマン大家 溝口晴康さんです。
溝口さんは東証一部上場メーカーに勤めながら2008年に不動産投資家として活動をはじめ、現在は東京、神奈川に7棟、総資産8億を超える不動産を所有。土地から仕入れる新築スキームを得意とされています。年間キャッシュフローは2000万円超。
現在は賃貸経営だけでなく、不動産投資家を中心としたビジネスコミュニティを運営し、IoTアパート用のIoTキットの作成・販売や、簡易宿泊&住宅を併設した住居を運営するなどメンバーとともに新しいビジネスを生み出しています。
また、ご自身が経営する株式会社アントレッフェンでは、不動産コンサルティングや起業支援を行い、新たに、今年、少額特化型M&A仲介業、株式会社REMAPを経営大学院の知人達と設立しました。不動産投資情報サイト『楽待』コラムニストとしても活躍されており、『理系サラリーマン大家が伝授する 不動産投資で不労所得1000万円を得る方法』の著者としても知られています。
不動産投資物件への融資が引き締められている今、溝口さんの手法は多くの不動産投資家にとって新たなビジネス拡大のヒントになるはずです。是非参考にしていただければと思います。
1,不動産投資のきっかけは「暗黒の時代」
編集部:溝口さん、よろしくおねがいします。今日は溝口さんのご著書や『楽待』コラムに書かれていることを読者目線で深掘りしてお伺いしたいと思います。
早速ですが、まず溝口さんが不動産投資をはじめたきっかけをお聞かせいただけますか。
溝口さん:はい、私は以前メーカーに勤めていました、その時からいずれなにかビジネスをやりたいと思っていたんです。だから、経済的な基盤を作ること以外に、ビジネスのスキルを磨くここと、事業資金をつくるためのツールとして、サラリーマンが副業でやることができる不動産投資を選びました。
サラリーマンをやめるきっかけは、私が30代後半にさしかかったときに会社でリストラがあり、「人員削減」と「間接部門の仕事を効率化させるためのシステム導入」を同時に進められた時期があったんです。
それで現場が非常に混乱したんです。システム導入で混乱していた時期は、ほとんどクリエイティブな仕事はせず、そのシステムを軌道に乗せるためのオペレーターのようになってしまっていました。
「付加価値がある仕事を実現する場」だったはずの会社が「自分の時間を切り売りする場」に変わってしまって、意識が低下したんです。組織を変えるほど熱意を持って取り組みたい仕事を見つけようと努力しましたが、結局見出せなかったのです。
だから、早急に会社を辞めて、情熱を傾けられる仕事を発見するという決断をしました。そのために、会社以外の収入減を確保するツールとして不動産投資を拡大しました。
2,競争を制するたった1つの大切なこととは
編集部:なるほど。ビジネスを立ち上げる準備としてサラリーマンをやりながら不動産賃貸業に参入したのですね。
そしていまは東京・神奈川に物件を7棟お持ちで、総資産は8億を超えているということですが、まず簡単にこれまでどのようにして拡大してこられたのかをおしえていただけますでしょうか。
溝口さん:はい。私が1棟目を買ったのは、2008年12月です。川崎市の武蔵小杉エリアでRC造・築20年、8,300万円の物件を紹介されました。当時考えていた予算の倍ですから、買う気はなかったのですが、見るだけ見てみると、思いのほかいい物件でしたので、7,500万円に指値して購入しました。
2棟目は、鉄骨造、築20年の物件ですが、この物件は1Fの一番大きい4LDKの部屋でシロアリが出ていろいろ問題がありましたが、最終的に改装し、シェアハウスに転用しました。
1棟目、2棟目は築20年以上のマンションなので、給水ポンプが壊れたりエレベーターの扉が開かなくなったり、シロアリが出たり、業務用のエアコンが壊れたりとトラブルがありました。
3棟目は三軒茶屋の新築です。この3棟目を持った時点で、十分な事業規模になったので、サラリーマンを卒業しようとしました。しかし、まだ手元に残るキャッシュフローは700万円ほどでした。一方で借り入れは3億円ほどありますので、さらに安定的な収入を得るためにサラリーマンを続けながら拡大することにしました。
3棟目からは、資産性を重視して安定したキャッシュフローを10年間手に入れたかったので、新築を中心に物件取得を進めました。理由は、2014年ごろから不動産価格が上がり過ぎて、中古の優良物件が出にくくなってきたこと、それに伴って中古と新築の利回り差が少なくなってきたんです。それに、中古の修繕トラブルを避けたかったということもあります。
そのあと数件入れ替えをして今に至っています。
わたしの不動産投資のやり方は、ごく一般的に考えられているやり方の王道だと思います。でも、やり方は平凡でも、それを非凡に実行すれば戦略になります。具体的には、「スピードです」平凡なことを早くやりました。
早く実行して、競争相手よりも先回りすることがだいじです。たとえば、中古から新築にシフトした理由は、インターネットで中古物件を探していても、利回りが低い物件しか見つからなくなってきたからです。そのときに、3つの選択肢を考えました。
1つは「不動産ではなく、別の投資手法を考える」、2つ目は「インターネットではなく、直接仲介業者へ行って物件を紹介してもらう」、3つ目は自分で土地から仕入れて新築を作る。
そして土地から仕入れて新築を作ることを選んで早く実践しただけなのです。
アベノミクスや東京オリンピックで、都内の物件の価格が上がって利回りが下がってきたわけです。私がなにか特別な情報を持っていたわけでなく、東京オリンピック決定で都内の不動産価格が高騰するということは誰でも知っていることです。
2014年に世田谷線の三軒茶屋駅徒歩3分の土地を買いました。建築条件付きで、土地・建物込でだいた1億1,000万円でした。一時期この物件を売りに出したところ、1億2000万だったら現金で買うという人がすぐに現れました。結局売却せず持ち続けることにしましたが、1年早く決断しただけで、簡単に物件価格が10%上がっているのです。スピード勝負というのはそういうことです。
3,中古物件修繕トラブルをこじらせない備え方
編集部:ありがとうございます。トレンドを読んでそれに乗るというのはそういうことなのですね。ところで、中古物件の修繕トラブルというと具体的にはどのようなことがありましたか。
溝口さん:はい。これは繰り返しになりますが、2棟目の物件の4LDKの部屋にシロアリが発生したことがありました。これは訴訟寸前までこじれましたが、最終的には、4LDKを4部屋に仕切ったシェアハウスに改築し、15万円だった家賃収入を24万円に増やしました。
それと、業務用エアコンが故障したことがあります。1・2Fに店舗が入っている物件ですが、購入後3年目くらいでエアコンが不調だと連絡がありました。業者に修理をしてもらいましたが、結局修理しきれず交換することになりました。しかし、室外機が3F入居者のベランダに設置されていて、交換に3F入居者との時間調整が必要だったり、見積もりが高すぎて複数業者の見積もりを取っている間に、2〜3ヶ月経過してしまいそうでした。
冬の寒い時期でしたので、入居者さんには、個別にヒーターを支給するので修理まで時間をもらえるように依頼しました。入居者さんは、すでに自前でヒーターを手配したのでできるだけ早く直してくださいということで落ち着きました。
あとは、自主管理をしていてこれが一番テンパったのですが、物件の給水ポンプが故障し、水が出なくなってしまったことがあります。その時は妻が出産間際で実家の仙台へ帰っていたのですが、「そろそろ産まれるのでは」と連絡があり、新幹線で仙台へ向かっているときに起こりました。
ポンプ室のカギも含めすべての鍵は私が管理していましたので、すぐに修理ができません。
考えた結果、ポンプ室のカギを壊して入ってもらうことにしたのですが、鍵屋さんと、水道業者さんを上手くコーディネートしないといけません。
遠隔でやりきる自信がなかったので、ある入居者さんに事情を説明し、お願いして、立ち会ってもらいました。業者さんにはお金を払えばいいのですが、入居者さんを巻き込んでしまったことは反省しました。その後は緊急時自分が現地に行かなければならない状況を洗い出し「現地にキーボックスをつけて、番号だけを伝えれば誰でも使える状況にしました」
4,なぜ私は8,000万円の売却益を得られたのか
編集部:ありがとうございます。溝口さんのご著書『理系サラリーマン大家が伝授する 不動産投資で不労所得1000万円を得る方法』には、いくつかの物件は2019年に売却しキャピタルゲインを得ることをターゲットにしていると書かれていましたが、これはうまく行っていますか?
溝口さん:そうですね。売却を考えていた物件は3棟あったのですが、2棟はうまく売り抜けました。これで8,000万円のキャピタルゲインを得ることができました。1棟はまだ持ったままです。
編集部:すごいですね。おめでとうございます!2棟の売却がうまく行った要因はなんだと思われますか?
溝口さん:1棟は土地から仕込んだ新築物件なので、建てた時点で売却しても利益が出ること。もう1棟は中古物件でしたが、付加価値をつけて高く売れるようにしました。
具体的には入退去があるたびに、新しい設備を導入して物件のバリューアップをしました。これも自主管理のメリットですね。管理会社任せにすると、単に入退去時に原状回復するだけの場合が多く、それだと古くなるにつれ家賃が下がる傾向にあります。管理会社から物件のバリューアップの提案があればいいのですが、それはほとんど期待できませんので、大家が自らやらないといけません。
編集部:なるほど。自分の物件は自分で価値を上げていくことを考えないといけないということですね。具体的にはどういう設備を導入してどれくらい家賃が上がった事例がありますか。
溝口さん:新築から4年経過した物件にIoTキットを導入して、家賃を95,000円から98,000円に上げました。IoTキットというのは、スマホを使って玄関の鍵の開閉ができたり、溝口さんIスピーカーを使って、対応しているテレビなどの家電の電源がオン・オフできたりするものです。これから、対応する機器が増えてくれば、もっといろいろなことができるようになります。
ただ、一概にIoTキットを導入すれば家賃を上げられるかというとそういうわけでもありません。わたしの物件は、都内で新しもの好きな入居者の方が多いので、IoTキットが家賃アップの材料になりましたが、たとえば高齢者が多い物件にIoTキットを導入してもあまり効果はありません。地域性や入居者の特徴に合わせた設備の導入がポイントです。
5,不動産投資をやるべき3つの理由
編集部:ありがとうございます。少し話が変わりますが、不動産投資のいいところはどういったところだと思われますか。
溝口さん:はい。不動産投資をはじめる前に2000年ごろ、まだ学生でしたが、低単位の現物株をやりはじめて、その後FXもやりましたが、最終的に数百万円の損失を出しました。
ライブドアショックのときには、震源地のライブドア株を7000株持っていて、1週間で数百万円を失いました。
サブプライムのときは、ドルを50万ドルほど抱え、証拠金も300万円ほどでしたのでロスカットされました。これも数週間で数百万が消えました。
やってみてわかったのですが、株やFXで短期間に資産拡大を狙うやり方で、素人は勝てません。短期間の勝負は結局ゼロサムゲームで、誰かのお金が誰かに移っているだけです。結局は大きなお金を動かすプロがトレンドを作っています。外部要因が多すぎて自分の力でできることは限られています。
その点不動産は、株やFXと比べると自分でコントロールできる要素が多いので、成功しやすいと思います。
その要素は3つあって、ひとつは不動産の場合第三者機関である銀行が審査してくれるということです。株やFXは個人の裁量で売買を決めますが、不動産投資は銀行から融資を受けるときに、銀行の審査が入ります。銀行は返済が滞っては困りますので、収益が見込めない物件には融資しません。審査を通過すれば銀行のお墨付きをもらうということですので、積極的に融資を受けるべきだと思います。
もうひとつは、キャピタルゲインではなくインカムゲインを狙えるということです。株やFXは「安いときに買って高いときに売る」ことで利益になりますが、個人投資家がやりきることは困難だと思います。不動産も売買で利益を上げる方法はありますが、それよりも毎月の安定した家賃収入を得ることを重視した投資です。株で言う「配当」に近い考えです。
3つ目は、価格変動が緩やかということです。不動産はいくらレバレッジをかけても、すぐに0円になることはないので、これもいいことです。なにか世界的な大問題が起こっても、影響が出るまで時間稼ぎができます。……続きを読む
溝口晴康さんの著書
『理系サラリーマン大家が伝授する 不動産投資で不労所得1000万円を得る方法』
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