不動産投資は物件を取得して終わりではなく、その物件をきちんと運営することが重要になります。ただ、取得する物件にばかり気を取られ、物件運営のことを気にしていない人は多いのも事実です。
そこで今回は、物件取得後の「運営」に注目して解説していきます。運営を知ることで、収益性の高い物件選びにも役立ってくるでしょう。特に、不動産投資と相性の良い弁護士・医師・公務員・上場企業社員の方は要注目です。
また、物件運営は区分(一室)投資か一棟投資かで変わる部分も多いですが、今回はその辺りも踏まえて解説していきます。
●物件運営のポイント
まず、物件運営のポイントである以下2点について解説します。
・稼働率を上げる
・入退去コストを下げる
不動産投資の収益は「家賃収入-経費」になるので、稼働率を上げることで安定した家賃収入を得ることができ、入退去コストを下げることで経費を下げることが可能です。
○稼働率を上げる
稼働率を上げるためには、何よりも「需要が継続する物件選び」が重要です。需要が継続する物件とは、たとえば「ターミナル駅が最寄り」や「商業施設が近い」など、そこに住む人が利便性を感じる物件です。
このような物件は価格が高いので、「想定家賃収入÷物件価格」で算出する利回りは低くなる傾向があります。ただし、利回りが異常に高い物件は何かしらの問題がある物件が多いので、逆に稼働率が低くなりやすいです。
そのため、利回りの高さだけで物件は選ばず、稼働率が高い物件か?その稼働率は将来に渡って継続するか?という点を重視して物件選びをしましょう。もちろん、利回りも重要な要素なので、その点を踏まえつつ…という意味になります。
○入退去コストを下げる
入退去コストとは、具体的に以下のコストです。
・物件の広告費用
・現回復費用
空室の場合は家賃収入が得られないので、ローンの支払いなどはそのまま手持ち資金を捻出することになります。また、なかなか入居者が決まらない場合は、広告費を支払い「ポータルサイトへの掲載を増やす」などの対応が必要です。
そうならないようためには、前項と同じく「賃貸需要が継続する物件」選びが重要になるでしょう。
さらに、退去時は原状回復費用がかかります。原状回復費用については、経年劣化部分はオーナーの負担になるので高額の負担になることもあります。
対策としては、クリーニング費用として「○○円/㎡」を必ず徴収する特約を付けて賃貸借契約を結ぶことです。また、部屋の使い方が良ければ原状回復費用も低額になるので、入居審査のときに「入居者の人柄」などを厳しくジャッジすることも対策になります。
●管理会社の選び方
管理会社とは以下のような業務を行ってくれる会社です。
・入居者の募集や賃貸借契約
・退去の立ち合いや修繕手配
・入居者の問い合わせ対応
・家賃の徴収や滞納時の対応
・共用部の清掃(一棟所有のみ)
・大規模修繕の提案(一棟所有のみ)
厳密に言うと管理会社と仲介会社(入居者募集など)は別の会社ですが、どちらも行っている会社もあるので、ここでは仲介業務も管理会社の業務としています。そんな管理会社を選ぶポイントは以下2点です。
○複数社への見積もり依頼
管理会社へは一社だけでなく、必ず複数社へ見積もり依頼しましょう。というのも「共用部の清掃」一つとっても、各社で清掃方法や清掃頻度が違います。
そのような細かい部分の比較をして費用対効果の高い管理会社を見極めるためには、複数社に見積もり依頼して、内容・金額を良く比較しなければいけません。
○目的に合った管理会社を選ぶ
管理会社にも以下のような特徴があります。
・店舗数が多く客付けに強い会社
・物件のすぐそばで24時間対応できる体制のある会社
・マンション一棟の管理ノウハウが豊富な会社
たとえば、区分(一室)マンション投資をしている場合で、「とにかく何かあったときに迅速に対応して欲しい」というのが、管理会社に求める一番の目的だったとします。その場合は、客付けに強いという要素よりも「迅速な対応」「24時間対応」などが重要です。
このように、不動産投資において管理会社へ求めることを明確し、それを加味した上で管理会社を選ぶと費用対効果の高い管理になりやすいです。
●管理会社にとっていい大家になる
上述した管理会社には、「いい大家」と思われましょう。というのも、管理会社には物件運営の大半を任せるので、言うなれば「物件運営のビジネスパートナー」です。
たとえば、客付けが上手くいかないときは管理会社から値下げの助言を受けることもありますし、設備入れ替えやリフォームの提案を受けることもあります。
それらは信頼関係が成り立っているからこそできることであるので、「いい大家」となることで信頼関係を構築しましょう。
●物件の魅力を上げる
物件の魅力を上げることは入居率の上昇にもつながりますし、退去率を下げることもできます。物件の魅力を上げる具体的な方法は以下の通りです。
・リフォームをする
・大規模修繕をする(一棟所有のみ)
・設備を追加する
リフォームや大規模修繕、設備の追加は物件として価値を上げる方法です。リフォームをすれば室内はきれいになりますし、水回りを入れ替えることで機能面も向上します。また、大規模修繕をすれば外観を含めた共用部がきれいになります。
ほかにも、たとえば女性の入居者が多い場合は共用部に監視カメラを設置したり、インターホンをカメラ付きにしたりもできます。つまり、ニーズに合わせた設備を追記することで、物件の魅力を上げ退去率の低下・入居率の上昇につなげます。
ただ、大規模修繕もそうですが、共用部を変更することは基本的に一棟を所有している場合しかできません。
●リフォームを安く依頼する方法
前項でも紹介した「リフォーム」ですが、リフォーム費用が高ければ物件の魅力を上がったとしても費用対効果が悪くなってしまいます。そのため、リフォームを安く依頼する以下の方法を理解しておきましょう。
・行政が実施する制度の指定業者である
・複数社から見積もりを取る
○行政が実施する制度の指定業者である
リフォームの種類が省エネや耐震・バリアフリー関連であれば、行政から補助金や助成金がもらえる場合があります。ただし、行政によっては指定業者でないと補助金や助成金がもらえないので、指定業者の有無を確認しましょう。
指定業者かどうかは「地方公共団体における住宅リフォームに係わる支援制度検索サイト※」で検索可能です。
※地方公共団体における住宅リフォームに係わる支援制度検索サイト
http://www.j-reform.com/reform-support/
○複数社から見積もりを取る
次に、管理会社と同じように複数社から見積もりを取ることです。見積もりを取ることで、リフォーム内容と金額が分かるので費用対効果を検証することができます。
ただ、「一式 ○○万円」のように大まかな見積もりしか出してくれない業者は注意です。というのも、細かく作業内容と金額が明記されていない場合、途中でリフォーム工事に変更が出た場合、想定以上の追加料金がかかる場合があるからです。
そのため、詳細な見積もりを出してくれて、細かな作業内容と金額が明記されている業者が良いでしょう。
●運営コストを理解する
さいごに、運営にかかる以下のコストを理解することです。
・ローン返済
・管理委託料
・固定資産税、都市計画税
・インターネット接続料、ケーブルテレビ料金
・エレベーター保守費
・修繕費
・消防点検、設備点検
・清掃代
・草木の剪定
これらのコストを理解するということは、物件運営の支出を理解できます。そうすれば、家賃収入を含めて計算する「収支シミュレーション」の精度が上がります。
○ローン返済
まず最も大きいコストはローン返済です。たとえば、3,000万円を借入期間25年、金利2.5%、元利均等返済で借り入れた場合、月々返済額は134,585円になります。さらに、変動金利の場合は金利が変動すれば返済額が変わるという点は覚えておきましょう。
また、ローン返済の利息部分については経費として計上できるので、税額を計算するときにその経費分は所得(家賃収入)から差し引くことが可能です。
○管理委託料
管理委託料とは、上述した管理会社に支払う費用です。金額は管理会社やプランによっても異なりますが、相場としては家賃の3~5%ほどになります。また、一部を自主管理にしたり、複数の物件をまとめて依頼したりすればコストを下げることは可能です。
○固定資産税、都市計画税
固定資産税・都市計画税は不動産を保有している限り必ずかかる税金です。税額は不動産の「固定資産税評価額」によりますが、取得する物件の「現在発生している固定資産税・都市計画税」をヒアリングすれば大体の税額は分かります。
○インターネット接続料、ケーブルテレビ料金
インターネットやケーブルテレビの配線を物件に引き込むのであれば、その使用料金はオーナーが負担します。そのため、基本的にはその金額を加味した家賃設定をすることで使用料金を回収します。
○エレベーター保守費
主にマンション一棟経営する場合、エレベーターの保守費用もオーナーが負担します。エレベーター以外にも外部廊下や外壁などもオーナーが補修するので、全体の「長期修繕計画」を管理会社に策定してもらうケースが多いです。
○修繕費
修繕費とは、退去した際の原状回復費用や前項の共用部の修繕費用のことです。退去時には賃借人と一緒に部屋を確認し、経年劣化した部分以外はオーナーが費用負担します。立ち合いや修繕手配に関しては、管理会社に一任することが可能です。
○消防点検、設備点検
消防点検や設備点検は、その物件のオーナーに義務があります。そのため、一棟保有の不動産投資であれば消防点検や設備点検は必須であり、点検費用は管理委託費用に含まれている場合が多いです。
○清掃代
共用部を清掃する費用も一棟不動産のオーナーが支払います。清掃は機械清掃をするかどうか?清掃頻度をどうするか?などで変わってきます。その内容を管理会社と話し合った後に決定し、清掃代も管理委託費用に含みます。
○草木の剪定
一棟不動産投資の場合、敷地内の草木の剪定もオーナーが負担します。草木の選定をする頻度も清掃代と同じように管理会社と決め、その費用も含めて管理委託費用を設定します。
●まとめ
物件運営の基本は上述した点を理解しておけば良いでしょう。これらの点を理解することで、物件運営時のコストや管理会社選定の重要性が理解できます。それは、収益性の高い物件選びと同じくらい、不動産投資の成功のためには重要なことです。